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二瓶健次(にへい・けんじ)

国立小児病院神経科医長
一色伸夫(いっしき・のぶお)

NHK衛星放送局チーフ・プロデューサー


こどもメディア研究会の活動を振り返って
子どもは未来である。という言葉に象徴されるされる、明日の世界を築いていく子どもの感性・想像力・協調性といった能力の源は、子ども時代の感動体験、知的好奇心を満たしてくれる豊かな環境にある。我々大人は、その環境が等しく子どもの身の回りにあるかどうかについて細心の注意を払う必要がある。子ども時代に知的好奇心を充分満足させ、熱中する素晴らしさを体験し、未知との出会いに感動し心ときめかし、生命の不思議さに驚き、自然の驚異に目をみはり、それらのメカニズムを解明する科学のすばらしさ、ひいては人間として生きている自分や他の人間への尊厳が生まれてくる。子どもたちがこうした体験をする新しい”場”の創造を目指して、こどもメディア研究会は設立された。最初に我々が取り組んだ病院内にいる子ども達、外に行きたくても行けない子どもに新しいメディアを用いて何がプレゼントできるかの報告をメンバーである小児科医の二瓶先生から報告させていただく。

子供のことについて考えるときに、常に病気をもった子供のことについても考えていかなければならない。健康であることと、病気をもつということとは人間的には基本的には同じであり、たまたま偶然の機会で病気をもつことになっただけである。子供の発達には家族や友達とのコミュニケーション、体を動かすこと、教育を受けること、自由に遊ぶといったことが重要であるが、病気をもった子供も全く同じである。しかし、病気をもつことにより、通常より精神的ストレス(家族や友人からの隔離、人間関係などに伴うストレス)、肉体的ストレス(たとえば治療、検査に伴うストレス)が多く、より、このようなことを必要としているのである。しかし、さまざまな肉体的、環境的ハンデがあるために、十分にそれらが享受できないのが現状である。そのためには色々な面からのサポートが必要であり、これには病気をもった子供と人との関りが最も重要であることはいうまでもないが。近年発達してきた、マルチメディアの技術も役に立つと考えられる。VRの技術は仮想を現実にしようとする技術とするならば、病気をもった子供の肉体的、環境的ハンデとなっている部分が実は彼らにとって仮想の部分であり、VRはこの部分を補って現実感として与える可能性があると考えられる。たとえば、入院していて、動物園や遊園地にも行けない子供に、動物園や遊園地を体験させたり、入院するまで自分の通っていた学校に、病院にいながらにして出席したり友達と遊んだりすることができるようにするのがVR技術である。VRの技術は病気をもつこどもにこそ、応用されるべきものである。われわれはこのような観点から、難病をもった子供たちに対して、これまでいくつかの試みをしてきたが、その概要と効果、意義について述べたい。

最後に、これからの時代ますます重要性をます”情報”に着目して、子どもたちの心の琴線にふれ、驚きや感動を与え、発見する喜びや人と触れ合う素晴らしさをもたらす活きた情報と何かを考えてみたい。
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