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ムラット・タンカール博士(Dr. A. Murat Tuncer)

医学士



テレビと幼年期の教育


 社会経済状況がきわめて劣悪なコミュニティーにおいて学齢前の子供たちやその親に接し、教育するのに、マスメディアは特に効果的な方法であろう。テレビが子供の発達と行動に与える影響は、家族に次いで最も重要だと思われる。子供は、眠っているとき以外は、テレビを見ている時間が最も長い。特に低所得層の子供たちはテレビの前で過ごす時間が長い。テレビが子供に与える影響は、子供がテレビを見て過ごす時間の長さと、見る番組の累積効果の関数として表される。

 テレビは、社会協調的行動を助長することもできる。学習と認知発達の分野において、テレビは非常に強い社会協調的影響を与えることができる。「セサミストリート」は、単純な数とアルファベットを用いて子供の才能を伸ばすことと、異なる人種間での調和、協力、親切という社会協調的態度を助長できることを実証した。事実、恵まれない幼い子供たちが日に1〜2時間テレビを視ることによって学校の成績がよくなることを示した研究がいくつかある。ただし2時間を超えると、年齢を問わず成績が悪くなる。

 プログラマー、小児科医、心理学者、教師から成る研究グループが1989年に「セサミストリート」の放送を行った。この番組の目的は、学齢前のトルコの子供たちに与える教育的効果をよりよくしようというものであった。1991年に「セサミストリート」の予備研究を実施し、番組が学齢前の子供たちに与える影響を調査した。研究対象となった147人の内95%が「セサミストリート」を見ていた。対象人口の88%が「セサミストリート」を楽しみ、「セサミストリート」にチャンネルを合わせたがった。37%は一人で、52%は家族と一緒に、9%は友達と一緒に番組を見た。「セサミストリート」を見た後で、53%の子供が数をかぞえ始め、26%が語呂あわせを、65%が幾何学的形の名称を覚えた。34%が語彙を増やした。

 テレビは、幼年期に見られる数多い重大な問題の原因でもあり、解決策でもある。テレビの見過ぎが、攻撃的行動、暴力、幼年期肥満と関連づけられている。子供がテレビの前で過ごす時間の長さが、いわゆるテレビのディスプレースメント効果を生じ、友達と外で遊ぶなど活発な時間の過ごし方や読書などを子供から奪ってしまうことがある。

テレビは強力なメディアであり、子供の生活に強い影響を与える。テレビに関しては、医師として、市民として、親として出来ることが多々ある。

  • コミュニティーは、質の高い、暴力を伴わない子供番組の放送を放送免許更新の条件とする立法を支持し、一日に少なくとも1時間の子供に対して教育的な効果を有する番組の放送を義務づける法律の復元を求めるべきである。
  • テレビでのアルコール、煙草、玩具の広告を排除すべきである。
  • 親が子供のテレビ視聴時間を一日1、2時間以内に限るよう、助言すべきである。子供の見る番組の選択に家族もかかわるべきである。小さな子供は現実とそうでないものとの区別をつけがたい。親は子供と一緒にテレビを見て、番組が終わった後、それについて話し合うべきである。つまらない番組でも、母親か父親がそばにいて子供が正しい意味がわかるように手助けすれば、よい学習経験となることもある。
  • 小児科医は子供の健康と発達に関する専門家として、メディアの有害効果を防ぐ上で重要な役割を果たすことができる。
 最後に、子供の権利条約の中には、子供教育におけるマスメディアの役割と子供をその暴力から守る条項がある。


子供が番組を見た頻度
毎日 75%
一日置き 7%
1週間に1、2回 12%
(学齢前、n=147、セサミストリート、1991年、トルコ)


番組を見ている時
真似をする 37%
キャラクターと話す 13%
質問に答える 68%
主題について質問する 34%
手の動きに加わる 11%
(学齢前、n=147、セサミストリート、1991年、トルコ)


「セサミストリート」を見た後の行動の変化
歯を磨く 45%
手を洗う 33%
言葉使いが良い 34%
社会的行動< 27%
食行動 20%
(学齢前、=147、セサミストリート、1991年、トルコ)


「セサミストリート」と他の番組について親が挙げた違い
より楽しい 35%
より教育的 83%
魅力的 26%
違いはない 1%
(学齢前、n=147、セサミストリート、1991年、トルコ)
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