トップページ サイトマップ お問い合わせ
研究室 図書館 会議室 イベント情報 リンク集 運営事務局

 トップ TOPICS一覧




●探訪・子ども研究室-2-
(2005年1月28日)

今月のナビゲータ:紺野道子さん(白百合女子大学発達臨床センター研究助手)

白百合女子大学発達臨床センターとは?

 白百合女子大学発達臨床センターは、心理臨床による地域社会への貢献と、臨床心理学的研究の発展および人材育成を目的として設置されている白百合女子大学の附属施設で、主に、子どもの発達に関する研究と相談・治療を行っています。1990年秋に開設され、今年で15年目に入りました。現在、1日平均約20組の親子が通ってきており、1年間の相談・指導のべ件数は1500件を越えています。相談の内容は、発達の遅れ、学習の問題、行動の問題、社会性の問題、不登校(園)、いじめ、虐待、食事の問題など多岐にわたります。対象は主に乳幼児から思春期ですが、幼児〜学童にかけての来所が多く、小学生のときに初めて相談にみえて、現在は成人している方もいらっしゃいます。
 来所のきっかけは、幼児では、言葉の発達が遅い、人との関わりが上手くできない、落ち着きがない等が多く、集団生活をする年齢になると、幼稚園や学校でみんなと一緒に行動できない、いじめられる、学校や園に行きたがらない、学習の遅れがあるなどの相談が増えてきます。さらに、小学校高学年から中学生になると、発達に問題のある子どものための適切な教育のできるところを探しているといった進路に関する相談も増えてきます。
 また、最近はテレビや新聞、本などで保護者の方がいろいろ調べていらっしゃることも多く、多動、広汎性発達障害(自閉性)、学習障害かもしれないので詳しく調べて欲しい、あるいはそれぞれの問題に合った適切な対応・教育方法を教えて欲しいといった方も増えてきました。地域の学校や教育センター、病院からの紹介の方も多くいらっしゃいます。2005年1月現在までに1186人の子どもたちとその保護者の方が来所しています。


相談の流れ

 初回に来所した時に、保護者の方の面接とお子様の行動観察・心理検査などを行い、臨床センターでどのような対応ができるかスタッフで相談します。そして、必要に応じて治療教育、プレイセラピー、保護者のカウンセリングなどを定期的に行っていきます。心理治療は個別で行うものと小集団で行うものがあり、個別治療は、治療教育、行動療法、遊戯療法、音楽治療、カウンセリング他です。集団療法は、幼児・学童を対象として1年間のプログラムに沿って、子どもと保護者の指導を行っています。
 来所者への対応には、主に本学児童文化学科発達心理学専攻の教員、研究助手、センター研究員などがあたり、発達心理学専攻の大学院生も教員の指導の下、実際に子どもたちと関わりながら臨床心理の仕事について勉強をしています。


発達臨床センターある日の風景

 発達臨床センターは、平日の午前9時から午後5時まで開室しています。午前中には、発達の経過観察をしている幼児や、不登校の小中学生が数ケース来所します。今日は、相談室で担当の臨床スタッフが、子どもと遊びながら発達の様子をみたり、お母様のお話を伺ったりしています。
 昼休みには、午後の活動に向けてセンターの専任スタッフと大学院の臨床実習担当教員によるミーティングがあります。その日の来所者の概容、担当、指導内容、実習生の動きについて確認します。相談が滞りなく行えるように、使用する部屋についての確認もします。その後、臨床の勉強をしている発達心理学専攻の大学院生とミーティングをします。実習の院生たちは、子どもたちがケガをしないように、相談がスムーズに行われるように補助をしながら、現場の動きを学んでいきます。
 午後からは、決まった時間になると次々と親子が来所します。子どもたちの「こんにちはー」という元気な声が響き、お母様は受付スタッフとニコニコとことばを交わしています。相談室では、学習の遅れが心配される小学生が心理検査を受け、隣の部屋ではご両親の面接が行われています。地階のプレイルームでは、幼児の音楽治療教育の最中で、きれいなバイオリンの音が流れています。相談や指導は、タイムテーブルに従って行われています。次の人の迷惑にならないように、決まった時間までに部屋や道具を元通りに片付けて返すのも大事なルールです。
 夕方になると小学生6人の学童グループがはじまります。この日は、みんなでクッキーを作って食べる日です。子どものたちの能力や教育目標に合わせた手順について、2週間前からスタッフで打ち合わせてきました。
 5時過ぎにすべての親子が無事に帰り、センター終了です。6時に部屋が閉まるまで、ミーティングルームでは、今日の記録を書いたり、スタッフに質問したりする実習生の姿がみられます。別の部屋では、今日のグループの反省会が行われていますし、教材の棚の前では明日の準備をする学生もいます。夕方に事例検討会や、相談申し込みのあった方の担当を決める会議を行うこともあります。


縦断的な研究が大切

 発達臨床心理学は、発達に関連して生じる認知や行動、情緒などの問題を扱い、その原因や対処方法を心理学的に究明し実践する研究領域です。対象となる年齢も幼児期から老年期まで幅広いので、様々なライフステージの発達についての知識や、教育・医療・福祉関係についての理解も必要になります。
 また、1つ1つの事例を縦断的にフォローしていき、それを積み重ねていくことが重要です。問題の内容や程度、問題となる原因や背景は1人1人違いますが、これまで自分が関わってきた中にも、似たような問題があり、その時に有効だったやり方が適用できることもしばしばあります。そういった積み重ねが、さらに次のケースに役立っていきます。
 この領域を研究する者として、同じような悩みを抱える多くの人の助けになるように、事例報告をしたり、教育・保育・医療・福祉など複数の領域の研究者でチームを組み、問題解決の方法を探っていくことも大切だと思います。

==========================================================================
白百合女子大学発達臨床センター
 センターのホームページはこちら。相談の申し込み方法やセンター内部の様子などが見られる。
==========================================================================


Copyright (c) 2000-2003, Child Research Net, All rights reserved.
このホームページに掲載のイラスト・写真・音声・文章・その他の
コンテンツの無断転載を禁じます。

利用規約 プライバシーポリシー お問い合わせ
チャイルド・リサーチ・ネット(CRN)は、
ベネッセ教育総合研究所の支援のもと運営されています。