最近の私のテーマは「みんなのための美術教育(Art Education for All)」*1 といいます。それは、1980年代以降、イギリスで用いられた差別のない教育を意味する「EDUCATION FOR ALL」(万人のための教育)を借りて、美術(広義)を通して広がっていくみんなの和(輪)、つまり(造形)表現と楽しく関わる中でつながっていく個人や世界をめざして、選んだものです。生涯学習ということばもありますが、特に「障害を持った人々の表現と教育」をテーマに今は取り組んでいます。
平成14〜16年まで科学研究費をいただいて、「イメージ・感性開発のためのメディア活用型総合学習パッケージの開発−美術館等におけるワークショップ及び学習デザインの教材開発に関する調査・研究−」と題する研究をしてきました。これは、「みんなのための美術教育(Art Education for All)」にも重ねて、情報ネットワーク時代の新しい造形的・美術的な教育の有り様を考える。たとえば、WEB上の自己表現、メディア・リテラシーとしての批評学習や鑑賞教育の必要性など、作品として完結する美術教育のパラダイム転換を考えるという言い方もできます。
先に紹介した「あさひdeアート」も、この「(ことばになる以前の)イメージ=いろやかたちの発生としてアート学習」としての「ワークショップ型学び」の事例研究として実施したものです。「みんなのための美術教育(Art Education for All)」には、アートは楽しいのに不幸な出会い方によって嫌いになり、疎遠になっている人があまりにも多いということがあって、この辺を考えていこうという意味があります。それを特に単なる理論ではなく、実践的にです。ワークショップはあくまで楽しさ優先です。そこでこの科研の結論を「ワークショップ型学び(の作り方と評価)」にしました。私たちは、今の美術教育をいわゆる総合的な学習へのシフトやクロス・カリキュラムへの関心を満たせるように、コンテンツ+メソッドが統合されたメディアとして開発し、具体的なワークショップという形式に落とし込んでいく理論と実践の構築をめざして、取り組んでいきたいと思っています。