シリーズ対談 TVメディアと子ども(3)
山下恒男[茨城大学教育学部教授]×近藤雅樹[国立民族学博物館助教授]
民俗学者の近藤氏は、ビジュアルによるメディアは実際に目に見えないものや存在しないものを描き出すのに有効であり、もともと怪奇の世界とはきわめて相性がいいという。描き方はともかく、その意味では怪談が子どもドラマのメインの題材になったとしても不思議はないという。 子どもの頃の経験で寺で地獄絵などを見せられた経験があるという山下氏は、いまの子どもたちの怖さの原体験はどこにあるのかが知りたいという。いまの子どもは人の死に接しても、それをどのような体験と結びつけ、意味づけるかが昔とは違っているような気がするという。 近藤氏は、怪談とビジュアルメディアが相性がいいといっても、現在のテレビが昔の怪談話と同じように妖怪やお化けを恐ろしいものとして描いているのかは疑問があるという。妖怪を怖がっている意識はあっても、その反面お化けをペット化して、自分の身近に置いているようなところがあるという。それは一種の清潔志向によるものではないのかという懸念を示す。 山下氏は想像力という話を広げながら、現代のメディアは本来の身体感覚から言ったら共生しないはずのものを安易に共生させてしまっていると指摘する。そうして、リアルなものとは一体何なのか、原点そのもの、座標軸そのものが失われてしまうような、規範のない技術的な時代に入りつつあるという。 身体の延長線上で考えられていた世界像と、イメージを自由に浪費できる電子社会の世界像。食い違い始めた世界像が、ちょうどテレビの上で交錯している。近藤氏は、ともかくいまの子どもたちの異界志向というのは、従来の人間がもっていた、霊魂観念に基づいたものとはまったく違っていることを直観するという。 |