働くママさんのご指摘通り、暗記中心の早期教育はその時点での記憶量
が増えることがありますが、その後の意味はあまりありません。大きく
なって適当な時期に学習した方が簡単に覚えられますし、また、古典や
詩など丸暗記をしても幼い子どもがその内容を理解し、味わう能力がな
ければ虚しい限りと思います。教育には適時性があるということは、教
育者の規則です。

また、一部ではある種の早期教育を受けた者の方が就学後の学業成績が
悪いという報告もなされております。これはやはり丸暗記のせいで、創
造的な思考力が養われる機会が失われたためと思われます。また、中に
は早期教育は自立性の欠如など長じてからの人格形成も悪影響を及ぼす
と主張する研究者もいます。
 
しかしながら、音楽やスポーツの分野では、才能を持っている子供なら
ば、早期教育がその才能の開花に及ぼす無視しがたい効果があります。
が、 もてはやされる成功例の陰には、たくさん の挫折し、傷ついた子
どもたちがいること、また、その分野で成功したからといって人格形成
に悪影響がなかったということでは必ずしもない、ということをご考慮
下さい。その分野の技術についてばかりでなく、子どもの教育」につい
ても十分な知識と思いやりのある指導者のもとで、子どもが楽しんでい
るならば意義があるという考え方もあります。したがって、早期教育を
続けるには、子どもとのやりとりの中で、子どもが受けている教育をど
う感じているかを読みとる必要があります。しかし、子どもが楽しそう
にしていても、それは親を喜ばせたい一心からで、実のところ無理して
おり、長じてからその悪影 響が出てくると言う場合が少なくありませ
ん。自分で判断する力も十分でない 乳幼児に関してはなおさらです。
 
だからといって、ご相談の内容から考えますと、奥様の方針に真っ向か
ら反対し、ご夫婦の間が険悪になるようなことがあれば、それは早期教
育以上の悪影響をお子さんにもたらすでしょう。

奥様の「安心料」とおっしゃいますが、奥様はどうして早期教育にとり
くま れたのでしょうか？ご主人もよくお考え下さい。一方的に反対す
るのではな、十分時間をとって早期教育の功罪を奥様とご一緒にじっく
りお考えになってはいかがでしょうか？そうすれば、早期教育に頼らず
とも、奥様のご不安も軽くなるかと思います。

早期教育の功罪については、「子どもの「やさしさ」を育む本」（子ど
もと遊び研究会　編　ＰＨＰ出版）の中で、お茶の水女子大学の内田伸
子先生が 易しくお話下さっています。また、デイヴィッド・エルキン
ド著「ミスエデュケーション」（大日本図書）が詳しいです。

 子育てクリニック相談員