コミュニケーションの軌跡ソーシャル・コミュニケーションネットワーキングというものが流行っているらしい。人と人とのかかわりが、そのままコンテンツになったようなウェッブ・サイトが幾種類もあるそうだ。友人によれば、自分のページをひらくと、ネットワーク上の友達の様子が気配として感じられるのがよいとのこと。自分のページにどんな人がやってきたかが記録されていくし、日記にコメントを書きこみあうこともできる。実際の生活では、日々たくさんの人とかかわっても、それが目にみえるかたちで残されることはあまりない。しかしここには、ネットワーク上の「かかわり」の軌跡がすべて残され、目にみえるかたちで蓄積されていくというしくみがある。 * * *
昨冬、ワークショップの基本を教えてくれるような取り組みに出会った。NPO学習環境デザイン工房を主宰する苅宿俊文先生が企画した「Tシャツで話そうよ、ねぇ」というワークショップがそれである。 * * *
ワークショップをデザインするときに大切にしていることのひとつに「かかわりのデザイン」というものがある。それは、ワークショップや学びをデザインすることは、さまざまな人やコトやモノのあいだの「かかわり」をデザインすることだと考えているからだ。そして、人と人とのコミュニケーションこそが、ワークショップにおけるさまざまな活動の軸になる。初めて出会った人とでも自然と話ができ、強制されることなく、他者とのコミュニケーションを楽しめるように活動をデザインするように心がけている。ワークショップにおいて、ある人がゆたかで心地よいコミュニケーションが実感できたとしたら、その人にとってそのワークショップは、実り多い充実した楽しい時間となっていたにちがいない。逆も然り。充実感を持てるワークショップとは、コミュニケーションがゆたかで楽しさに満ちているものであるとも言えるのではないだろうか。コミュニケーションのゆたかさは、そのままワークショップのゆたかさを示してくれるのかもしれない。とはいえ、コミュニケーションそのものは目にみえない。楽しかった時間が目にみえるかたちで残されるとしたら、それはその経験をさらに味わいなおすことができる強力なツールとなるだろう。「Tシャツで話そうよ、ねぇ」は、ワークショップがコミュニケーションによって成立している場であるのだということと、行為が目に見えるかたちで残されていく楽しさを、わたしたちに再確認させてくれる。 * * *
NPO学習環境デザイン工房 Copyright(c), Child Research Net, All rights reserved. |