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 学びとデザイン研究室〜Learning and Design〜

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コミュニケーションの軌跡

ソーシャル・コミュニケーションネットワーキングというものが流行っているらしい。人と人とのかかわりが、そのままコンテンツになったようなウェッブ・サイトが幾種類もあるそうだ。友人によれば、自分のページをひらくと、ネットワーク上の友達の様子が気配として感じられるのがよいとのこと。自分のページにどんな人がやってきたかが記録されていくし、日記にコメントを書きこみあうこともできる。実際の生活では、日々たくさんの人とかかわっても、それが目にみえるかたちで残されることはあまりない。しかしここには、ネットワーク上の「かかわり」の軌跡がすべて残され、目にみえるかたちで蓄積されていくというしくみがある。

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昨冬、ワークショップの基本を教えてくれるような取り組みに出会った。NPO学習環境デザイン工房を主宰する苅宿俊文先生が企画した「Tシャツで話そうよ、ねぇ」というワークショップがそれである。

はじめて出会った人に、肩をたたきながら「ねぇ」と声をかけ、そこからコミュニケーションが始まる。この最初のひとこと「ねぇ」をきっかけにしたやりとりを、繰り返しつつ拡大していき、かかわりあうことそのものを楽しむという活動である。参加者もスタッフも白いTシャツを着ている。さまざまなイラストが描かれた附箋紙がたくさん用意されていて、近くにいる人に「ねぇ」と声をかけながらその付箋紙を相手のTシャツに貼っていく。たくさん声をかけられると、たくさんの付箋紙が自分のTシャツに貼り付いていく。Tシャツを見れば、コミュニケーションの量がわかるのだ。行為が身体に記録されていくさま、コミュニケーションの軌跡が蓄積されていくさまを目にして、ワークショップやコミュニケーションというものの原点に立ち返らされたような気がした。

この活動は、群馬大学のフレンドシップ事業として、茂木一司先生(群馬大学助教授)らが中心となって、群馬県立あさひ養護学校で開催された。ここでは、4つのメディア・アート・ワークショップが実施され、「Tシャツで話そうよ、ねぇ」もそのひとつとして企画された。コミュニケーションの軌跡であるイラストは蛍光塗料で描かれていて、活動の区切りごとに灯されるブラックライトで照らされ光を放つ。このメディア・アートらしい非日常的なしかけも、参加者らをよろこばせていた。それは、あたりまえの中にある大切さに、ちょっとした工夫で光を当てるかのような演出に見えた。今思うと、ブラックライトで照らされるたびにやわらかく発光する軌跡たちは、コミュニケーションそのものがコンテンツとなる可能性を静かに語っているようだった。

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ワークショップをデザインするときに大切にしていることのひとつに「かかわりのデザイン」というものがある。それは、ワークショップや学びをデザインすることは、さまざまな人やコトやモノのあいだの「かかわり」をデザインすることだと考えているからだ。そして、人と人とのコミュニケーションこそが、ワークショップにおけるさまざまな活動の軸になる。初めて出会った人とでも自然と話ができ、強制されることなく、他者とのコミュニケーションを楽しめるように活動をデザインするように心がけている。ワークショップにおいて、ある人がゆたかで心地よいコミュニケーションが実感できたとしたら、その人にとってそのワークショップは、実り多い充実した楽しい時間となっていたにちがいない。逆も然り。充実感を持てるワークショップとは、コミュニケーションがゆたかで楽しさに満ちているものであるとも言えるのではないだろうか。コミュニケーションのゆたかさは、そのままワークショップのゆたかさを示してくれるのかもしれない。とはいえ、コミュニケーションそのものは目にみえない。楽しかった時間が目にみえるかたちで残されるとしたら、それはその経験をさらに味わいなおすことができる強力なツールとなるだろう。「Tシャツで話そうよ、ねぇ」は、ワークショップがコミュニケーションによって成立している場であるのだということと、行為が目に見えるかたちで残されていく楽しさを、わたしたちに再確認させてくれる。

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NPO学習環境デザイン工房
http://www.heu-le.net/

学習環境デザイン工房は、子ども向けのステキなワークショップをたくさん手がけるNPO。毎月定期的に開催される「らしさ工房」では、わたしもこれまでに2年連続でワークショップのデザインをさせていただきました。3度目になる今年は、11月27日に実施予定。ただいま準備のまっさいちゅうです。
(2004/11/19)

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