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こどもサイエンストーク
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こんな会になりました 〜レクチャーの記録

【もくじ】

プロローグ(宮下孝広)
昆虫生態園でのチョウの観察(宮下孝広)
ナビゲータの話(宮下孝広)
レクチャー「ダーウィンが考えたこと」(佐倉 統)
チンパンジー舎の見学(宮下孝広)

【プロローグ】

 「こどもサイエンス・トーク」の第2回は、ゲストに佐倉統さんを迎えて「進化」をテーマとすることにしました。あわせて動物園を会場とし、そこでの観察をもとに会を進めることも計画されました。動物園という既存の施設における体験的な活動と専門家のレクチャーを聞くこととをどのように結びつけるかということも今回の課題の一つです。

 進化について限られた時間のなかで何を伝えるべきか、ここでは生物の多様性という問題に絞りました。しかもその多様性は、その起源に遡れば1度限りの生命の発生に端を発するものです。このことの認識が40億年にもわたる生命の歴史とそれを導いてきた生物進化の壮大さを感得する鍵になるだろうと考えたのです。
 生物の多様性については動物園という施設自体が我々に投げかけている問題です。同じ哺乳類といわれる動物であっても、ゾウもコアラもトラもおのおの違って見えています。しかし、起源において同一であるということに関してはどうでしょうか。最も人間に近いと言われるチンパンジーでさえも飼育されている動物に過ぎないというのが一般的な感覚でしょう。元をたどれば同じであるという認識にはどのようにして至ることができるか、これが今回の最大の課題でした。多摩動物公園昆虫生態園で観察を行うことにしたのはこれに関する考察の結果でした。

 進化論は、おもにガラパゴス諸島で行った観察を基にしてチャールズ・ダーウィンによって理論化されました。彼が観察したものは、佐倉さんのレクチャーにもあるように、例えばフィンチという鳥の分布でした。同じフィンチという鳥が、海によって隔てられることによって、それぞれの島の環境に応じて少しずつ形態の違うくちばしを持つように変異したことに気づいたのです。進化について考えるとき、私たちは種の間の大きな変異について目が奪われてしまいますが、そのもとになるのは、個体差ともいうべき小さな変異が亜種を生み、さらに変異が大きくなって別の種になるというメカニズムなのです。これを演繹的に一般化して考えれば、生物進化の40億年にわたる壮大な歴史に至ることになるのです。
 そのような小さな変異による多様な種の現出を見通せる手がかりを求めて実地にも検討した結果、昆虫にたどり着きました。昆虫生態園では様々なチョウが展示されており、地理的な変異や生息している環境への適応も意識した展示・説明がなされています。もちろんチョウの間の違いの方が目を引きやすいですが、チョウとしての共通性、ひいては起源の同一性にも気づいてもらえるのではないかと期待したのです。
 よく観察してもらえるように、チョウの胴体(アゲハチョウをモデルに、線で上から見た図と横から見た図)を描いておいた用紙を渡して気に入ったチョウをスケッチしてもらうことにし、それをもとにサイエンス・トークを始めることにしました。

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【昆虫生態園でのチョウの観察】

 当日10名(4年生3名・5年生4名・6年生3名:男子5名・女子5名)の参加者に対し、スケッチ用具(用紙と筆記具)を渡して、次のような教示を与えました。

 「自分の一番気に入ったチョウを観察してみましょう。翅の形や大きさ、模様などをよく見ましょう。ひらひら飛んでよく見えないかもしれませんが、説明を読んだり、写真と見比べたりしてみましょう。きれいでなくてかまわないので、チョウをスケッチしてみましょう。また、そのチョウはどんなところにいるか、何を食べているかなどについても観察したり、説明を見たりしてみましょう。」

 思い思いに観察したものは、サイエンス・トークの自己紹介の場面で報告されています。概ね翅の模様や色、触覚や口の形、そして飛んでいたりとまっていたりした場所について話されました。動物園のスタッフが巧みに入園者の手にとまらせていたので、じっくりと観察できた子が多かったようです。

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【ナビゲータの話】

 昆虫生態園を出たところにある昆虫系統図の壁画がある広場に腰をおろして、まず自己紹介を兼ねた観察の報告をしてもらいました。そしてナビゲータが問いかけます。

 「日本にチョウってどれくらいいるか知っていますか?何種類くらいか予想してみてください。」
 「世界中でだったら何種類くらいだと思いますか?」

 子どもたちの予想を聞き、その理由を聞いた後、「世界中でだとだいたい18000種類くらい、日本では250種類くらい」と、説明。そして「どうしてこんなにたくさんできたんだろう」と、今回の中心的な問題を投げかけます。
 「(聖書に書かれているように)元々違った生き物が別々に生まれてきたのか、それとも元をたどると同じものなのか、どっちだと思いますか?」

 挙手してもらったところ、元をたどれば同じと考える方をみな支持しました。しかし単純ではないようです。十分に理屈は通っていないようですが、「海から生まれてきたから、いろいろな生物がいるはずだ」と考えを変える子もいます。また、チョウは幼虫から成虫になることを知っていて、成虫になるときに別のチョウが生まれてくるというような考えを披露してくれる子もいます。もちろんよく分からないというのが正直なところで、どの子も首をかしげながら話してくれました。とくに最後の子の発言はポケモンの「進化」を連想させる説明でしたので、それは今考えている進化ではないことを話して、用意してきた資料の説明に移ります。

 「これは、ある資料(*1)からコピーしてきたものです。右側のページを見てください。ツマベニチョウと言われるチョウです。これに似たチョウは飛んでいましたか? 1匹だけ、もうちょっと赤い、こんな感じのチョウが飛んでいた様な気がしました。この資料にあるのは、上の方がツマベニチョウで、下の方がヒイロツマベニチョウと言います。
 標準形は左上の形なんだけれど、住んでいる場所によって少しずつ違ってくるんだそうです。例えば、フィリピンっていう国、みんな知っているでしょ? フィリピンにいるツマベメニチョウはこんな色や形をしています(【8】)。それから、ボルネオという島に住んでいるチョウは【4】です。左のページに地図があるので見てください。フィリピンはここ、ボルネオは真中へんに書いてある大きな島です。みんな周りが海で隔てられています。ところが、大昔はこういう島がくっついていたり、近かったりした所もあったんです。元々チョウだからヒラヒラ飛んでいろんなところに移動することができるわけだけれども、海で隔てられてから(長い年月をかけて)、フィリピンにいたチョウはフィリピンに合った形になり、ボルネオに住んでいたチョウはボルネオに合った形になるということが起こるようです。
 でも、こうやって見てみると、ツマベニチョウっていうのはみんな同じ感じがするよね? さっきの話じゃないけど、同じような所から分かれていくということが、チョウの世界の中では起こるんですね。」

 「今度は別の資料(*2)を配布します。左側を見てください、説明はまだ読まないでね。これらのチョウ、みんなすごく違う感じがしませんか? 模様を見ると、特に色が全然違った感じだよね。でもその下に書いてある説明を読むと分かるように、これはみんなメガネトリバネアゲハという種類です。この3つとも同じアゲハチョウの一種だと考えられているみたいですね。これも、南太平洋の島々に住んでいるチョウです。同じチョウが随分違ったチョウになっていることがわかります。やはり同じものが分かれていくことが起こるみたいですね。」

 「(さっきの予想のなかでは)元々別々の生き物として生まれてきたんじゃないかという話もあったんだけど、元々は同じだったんじゃないか、そのことはまだ本当に決着はついていないんだけど、元が同じだとして、違う生物の種類がでてくる仕組みを考えてみたいと思います。
 別の資料(*3)を配布します。クワガタの一種で、ローウィツヤクワガタです。そのクワガタの写真がたくさん出ていますが、この写真の中で何か特徴があるんだけど、それを見つけられるかな? どんな所が似ていたり、どんな所が違っていたりするかな?」

 「ハサミの形っていう意見が出ましたね。ハサミの形はどうなっているかな? 今6年生の子達が見つけてくれたのは、比べて見てみると、ハサミの形がなんだか随分違って見える。上の段の方は二股に分かれて細い感じなんだけど、一番下の段のは日本式のハサミっていうか、少し太くなってるし、形が短くなったり、幅広だったり、上下の段の間で見るとそういう風になっています。
 同じ段を横に見たら、これはどういう風に違ってくるか、分かりますか? 1番簡単なのは大きさが違うよね。左側の方が大きくて、右側に行くほど小さくなっています。
 この写真は、段の間の違いと段の中での違いと、両方が組み合わされてできています。こういうことについて研究している人の話ですが、段の中での違いというのは、例えば栄養が豊富な所だとか、そういう住んでいる環境によって違ってきます。ところが、段の間の違いになると、みんなも知っているかもしれないけど、遺伝子の違い。もって生まれたものが違うために、ハサミの形が違ってくるそうです。」

 元をたどれば同一の起源なのか、元々違う生物が多様に発生したのか、この説明では決着がついていないことを意識しながら、「これから進化を専門にしておられる佐倉先生にお話を聞いて、その辺はどうなっているのか、みんなで考えてみましょう。」

*1『神奈川県立生命の星・地球博物館 展示解説書 平成7年版』 pp.88-89
*2『オルビス学習科学図鑑 昆虫1(チョウ・ガ)』1980年 学習研究社 p.141
*3『神奈川県立生命の星・地球博物館 展示説明書 平成7年版』 p.87

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【レクチャー「ダーウィンが考えたこと」】

 進化というのは、生き物が長い時間をかけて、少しずつ変わっていくことです。でも、昔の人は生き物は進化しない、変わらない、と思っていました。さっき温室の方で、オオコマダラを見たと思いますけど、オオゴマダラは、今日見ても明日見てもオオゴマダラだし、模様とか変わらないよね? 幼虫は、サナギになって大人になるけれど、オオゴマダラはずっとオオゴマダラでしょ? オオゴマダラの子どもはオオゴマダラで、その子どももオオゴマダラ。ずーっと変わらない。だから昔の人は、生物のこういう種類、それを「種」といいますけれど、それはずっと変わらないんじゃないか、と思ってたんです。変わらないということは、最初からこういう形をしているということです。そして、それは神様が創ったんだろう、と思っていたんですね。
 ところが、いろいろ調べてみると、生き物の中には、お互いによく似ているのと似てないのがあることが分かってきました。しかも、似ているのは近い所に住んでいる。遠くの方に住んでいるのは、かなり違う。そういうことがわかってきました。ということは、まんなかに元々の祖先がいて、ちょっとずつ変わってこうなってきたと考えるのが自然じゃないかと思う人が出てきたんです。
 この話は、チョウだけじゃなくて、カブトムシでもクワガタムシでも他のいろんな虫でも、虫だけじゃなくてゾウやウマなどの動物でも、魚や鳥でも、みんなそうです。似ているものは近くに分布していて、遠くにいるのは似ていない。もっともっと遠くにいると全然別の種類になっちゃう。そういうことが分かってきました。
 なぜ分かってきたかというと、船ができて、昔は行けなかったような遠くの世界中のいろんなところへ行くことができるようになったからです。それまでは、ほとんどの人は生まれた場所でずーっと暮らし、そのまま死んでいったので、世の中全部同じだと思っていたんですね。でも、だんだんと交通手段が発達してきて、馬に乗って移動したり、旅行したり、船で世界中周るようになると、他の場所には全然違う生き物がいることがわかってきたのです。

 さて、船で世界中回って、やっぱり生き物は進化しているということを言ったのが、この人。(本を見せながら)チャールズ・ダーウィンいう人ですね。(写真をもらって配りながら)19世紀の人です。ダーウィンのえらいところは、どうして生き物が変わっていくか、その原因を発見したんです。住んでいる所がちょっとずつ違うと、そのすんでいるところ──環境ですね、その違いにあわせて生き物も変わっていくんだ、と考えました。
 (子どもに尋ねる)チョウはストローみたいな口で蜜を吸うよね? どういう花の蜜を吸うかによって、長い管で吸うか短い管で吸うか、ちょっとずつ違います。そうすると、もとは同じ生き物でも、住んでいる環境が違うから、その環境に合っているものが少しずつ増えていって、種全体が変わっていくんじゃないかとダーウィンは考えました。これがチャールズ・ダーウィンの自然選択という考え方です。元は同じものが、ちょっとずつちょっとずつ変わっていくんです。その結果、今では日本には250種類のチョウが、世界中には18,000種類のチョウがいます。でも、元を正せば全部同じ種類です。

 チャールズ・ダーウィンは、若い時にビーグル号という船に乗って世界中を回りました。このビーグル号という船は、世界地図を作ろうとしていたんです。さっきも言いましたが、人が旅行するようになると自分が住んでないところに行くようになりますね。そうすると、住んでいる人も違う、生えている植物も違う、動物も違う。見たこともないような山があったりします。そういうところの地図を作ろうという話が当時持ちあがったのです。ダーウィンは、このビーグル号に25歳くらいの時に乗って世界中を周りました。船に乗った時、ダーウィンはまだ生物の進化を信じていなかった。
 ダーウィンが、どうして進化を信じるようになったか? それは、いろいろな生き物を実際に自分の目で見たからです。これはフィンチという鳥の仲間です。よく見ると、くちばしの形が違うでしょ。小さな木の実を食べるのはこういう細いくちばしをしています。大きな木の実をたべるものは、太いくちばしをしている。この仲間は全部ガラパゴス諸島にすんでいるんですが、ちょっとした食べる物の違い、例えば木の実を食べたり虫を食べたり草を食べたり、そういう違いでクチバシの形が変わっていることをダーウィンは発見したんです。環境に合わせて生き物の形や行動が変わっていくことを発見したんです。

 最初に言ったように、そのころはまだ神様が世界を作り生き物も作ったと考えられていました。種がだんだんだんだん変わっていくというダーウィンの考えは、そういったキリスト教の考え方と違うので、キリスト教の考え方を強く唱えている人は、ダーウィンとは随分論争をしました。でも、だんだんとダーウィンの考え方が正しいことが分かってきて、今ではほとんどの人が、生物が進化してきたと考えています。

 ここで2つ問題があります。
 一つは僕たち人間も生き物だよね、そうすると僕たち人間も別の生き物から進化してきたということになるのかな? (子どもに尋ねる)人間はずっと人間なのかそうではないのか。きみたちのお父さんお母さんも人間だよね。おじいちゃん、おばあちゃんも人間だよね。たぶん…ひいおじいちゃん、ひいおばあちゃんも。僕もひいおじいちゃんおばあちゃんには会ったことないけれど、たぶんずっと人間だよね。ご先祖様は江戸時代になっても、もっと前でもずっと人間だから、変わらない。それが昔の人の考え方。
 けれども、ダーウィンの進化の考え方は、うーんと長い時間をかけて、それが少しずつ少しずつゆっくり変わる。昨日とか明日とか、去年とか来年とか、10年とか100年とかあるいは1000年とかではわからないぐらい、ちょっとずつちょっとずつ変わってゆく。1万年とか10万年とか経つと、同じ種だったのが別の生き物になっていく。進化していく。
 このような考え方からすると、人間も、もともとは別の生き物から進化してきたんですね。僕たちの、お父さんのお母さんのお父さんのお母さんのお父さんの・・・ずっとそれが2000回くらいになると、おサルさんになります。おサルさんの中でも、チンパンジーというおサルさんです。チンパンジーはみんな知っているでしょ。この多摩動物園にはチンパンジーのすごくいい展示があります。もし時間があったら後でそっちも見に行きたいと思います。

 先ほど宮下先生から遺伝子の話がありましたね。今日は詳しくお話はしませんが、遺伝子は僕たちの体を作る設計図みたいなものです。みなさんの遺伝子はお父さんから半分とお母さんから半分ずつきています。みなさんは、お父さんとお母さんから半分ずつ設計図をもらっているんです。だから、お父さんにも似ているし、お母さんにも似ているでしょ? (子どもに尋ねる)前回のサイエンス・トークに出ていた人は遺伝の話をしたので、お父さんお母さんに似ている話を聞いたことがあるかなと思いますけれど、人間はみんな人間の遺伝子を持っています。この人間の遺伝子とチンパンジーの遺伝子がどれくらい違うかというと、98%から99%は同じなんです。だから体を作る設計図で言うと、人間とチンパンジーとは、ほんの1%くらいしか違わない。見た目は随分違うけれども、遺伝子で言うとほとんど同じなんですね。じゃあ、人間とチンパンジーはどのくらい前に別の種類になって、人間は人間、チンパンジーはチンパンジーになったのでしょうか。それは、だいたい500万年くらい前といわれています。500万年、すごい昔だよね。わかんないよね。僕も良くわかんないです。500万年といわれてもピンと来ないよね。
 だからいつもこういう話をします。今ここ(指で位置を指す)をだいたい西暦2000年とします。1メートルを1000年として計算してみると、1メートルずれたここが西暦1000年になります。平安時代ですね。もう1000年いくと、ここが紀元0年です。日本は弥生時代かな。石器を作ったり土器を作ったりしていた頃です。もう1メートルいくと、ここが紀元前1000年。さらに1メートルいくと、ここが紀元前2000年。あそこからここまでくるくらいで、もう文字がない時代、古代エジプト時代や古代中国の時代です。人間の歴史は、そこから端っこまでの5メートル、5000年くらいの時間しかないんです。
 じゃあ、生き物としての人間が進化してきた500万年というのは、どれくらいなのか。これを1000年=1メートルで換算すると5キロになります。ここ(多摩動物公園)から5キロというとどこになりますか? 立川くらいですか。5キロというのはそのくらいの距離です。人間のような寿命の長い生き物の進化には、それくらいの時間がかかるんです。昨日とか明日とか来年とか、100年とかという話と比べると、すごく気の長い話ですよね。だから、ぼくたち人間の感覚からすると、分かりにくいんですね。

 もう一つの問題は、人間もふくめて地球上の生き物は、全部、元は1つのものから分かれてきたのかそうではないのかという話です。地球上に生き物は全部で何種類くらいいるか知っていますか? チョウは世界中で1万8千種くらいいます。他の生き物はどうでしょうか? 植物も、カブトムシも、ゴキブリも、トンボも虫も魚も全部入れてです。チョウが1万8千くらいだから、100万種類? 500万くらい? 1000万くらい? 5000万くらい? 1億くらい? 正解はわからないんです。まだ誰もわからない。なぜわからないかというと、世界中の生き物が全部調べられていないからです。見つかっていない生き物が、まだまだたくさんいるんですね。だけど、いろいろな方法で推定されていて、1番多い推定だと2億種類といってます。1番少ないので5000万種類くらい。だから、間をとって大体1億種類くらいあるだろうといわれています。それ全部が元は同じ。1つです。人間もゴキブリも、今日見たオオコマダラも、コンブも、大腸菌も、みんなもとは同じです。みんなは、何か生き物飼っていますか? ウサギとかザリガニとか? ウサギもザリガニももとは同じです。

 もちろん、人間もそうです。人間もウサギもザリガニも、もとは同じです。人間は昔サルだった。では、サルの前は何だったのかというと、モグラです。モグラみたいな生き物から人間の祖先が分かれた7千万年くらい前。もっともっと遡ると、恐竜みたいな生き物だった時代があります。トカゲみたいな生き物、っていったほうがいいかな。ウサギとはここで一緒になりますね。それからさらにさかのぼるとサカナになって、ホヤみたいな生き物になって、やがてすべての生き物が全部一緒になって、最初に生物ができたときは、たったの一種類になります。1番最初に生き物ができたのが40億年前です。40億年って500万年よりももっと長いです。1000年=1メートルで計算する、人間が5Kmでしたね。生き物ができたのが40億年前ということは4000キロ。4000キロというと、実は地図で調べてきたんだけど、ここからミャンマーという国までの距離になります。あるいはモンゴルとかね。朝青龍の出身地だね。それくらい昔に生き物が地球上にできて、ちょっとずつちょっとずつ進化してきて、いろんな種類ができてきて、中には絶滅したのもいます。ほとんどは絶滅したと言われています。その中で魚みたいのが出てきて、陸に上がって恐竜になって、サルになって、みなさんのおじいちゃんおばあちゃんになって、お父さんお母さんになって、みなさんになったのね。40億年前に生まれた生き物が持っていた遺伝子が、ず〜〜〜っとつながって、みなさんの体の中にいるんだよ。ちょっとずつちょっとずつ変わっていったの。というのが、進化の話です。

 進化というのは、こういう風にすごく長い時間かかる話なので、分かりにくいんだよね。実験で確かめるっていってもやりにくいから。物が落ちてポンと下に行くとか、星が見えるとかという話とは違って、進化してくるっていうことがわかったのは本当に最近のことです。だから、いろんな人が進化のことを間違えて考えています。さっき、ダーウィンの進化の考えが、キリスト教の人たちから批判されたという話をしましたが、今の大人の人でも進化のことをちょっとまちがってイメージしている人が結構います。宮下先生がポケモンの話をしましたね。ポケモンが進化するって。あれはポケモンを作っている人も間違えているんです。あれは、進化じゃなくて「成長」なんだよね。幼虫がサナギになってチョウになるような。「キャタピー」が「トランセル」になって「バタフリー」になるんだっけ? これは生き物の種の進化ではなくて、個体の成長ですね。みんなが大きくなること、子どもが大人になることと同じでしょ? でもそれを進化って言っているのは、作っている人が間違えているんですね。そう言うふうに、進化というのは分かりづらい。難しい考え方なんです。

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【チンパンジー舎の見学】

 ここで今回のサイエンス・トークは終了とした後、佐倉先生にチンパンジー舎に案内していただき、飼育係の方の説明で裏の運動場と寝泊りする個室を見せていただきました。子どもたちはチンパンジーの唾はきや威嚇の行動などに直接ふれ、またチンパンジーの食事や日常生活の様子などを聞いて昆虫生態園以上に興味を持ったようで、この後のインタビューでもチンパンジー舎で見聞きしたことを多く語ってくれました。



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