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ドゥーラの効用
小林登(チャイルド・リサーチ・ネット所長、小児科医)

 ドゥーラ(Doula)の語源は、ギリシャ語で奴隷という意味があるが、非常に尊敬される立場の女性だと聞く。数年前にギリシャの放送関係者に尋ねたところ、今でもドゥーラは活躍し、極めて尊敬される存在だという。ドゥーラのように、女性の子孫を残す人間の自然な営みをいかにうまく働かせるかには、優しさに代表されるような「感性の情報」が必要なのだと思う。
 クラウス、ケネル博士(小児科医、米国)が、1990年代初頭にテキサスの病院でドゥーラのお産に対する効用を調べる大規模な医学研究を行っている。それによると、オキシトシン剤の使用量が6割〜7割程度に減少する事を報告した。オキシトシン剤は陣痛促進効果のあるホルモンだが、産婦が不安を感じるとオキシトシンの分泌が減るので、注射する必要が出てくる。ドゥーラの優しいサポートだけで、分娩時間は短くなるのである。また、不安になることで、子宮へ流れる血液も減り、胎児が仮死になる恐れがあるが、産婦を安心させることで仮死の頻度や帝王切開の頻度も減るのである。
 また、ドゥーラがついて出産したお母さんとつかなかったお母さんのそばに赤ちゃんを置くと、ドゥーラのついた母親の方が積極的に赤ちゃんを触ったり話しかけたりする研究結果もある。ドゥーラは、母親の子育て意欲によい影響も与えているのである。
 ドゥーラは、わが国の産科医療で不足しているものをカバーできる重要な方法であると思う。


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