私は、第2子の出産でドゥーラをお願いしました。第1子のときは出産で大変な思いをして、心残りがあったからです。一人目は日本で出産しましたが、二人目は上海(中国)に里帰りをして出産しました。上海で一番有名な病院を探したら、そこにドゥーラのサービスがあり、お願いすることにしました。
陣痛が始まると、ドゥーラが陣痛室に来て、おなかや背中をさすり、言葉をかけたり、胎児の位置などを逐一教えてくれ、とても安心しました。また、こういうときはこういうふうに、と的確な指示を出してくれ、出産に際して自分はどうしたらいいのかがわかりました。産まれるまでの全てのプロセスを一人のドゥーラが見守ってくれました。
一人目の出産と比較すると、大きな違いです。一人目のときは、とにかく大変だったので、自分のことで精一杯で、子どもを触ったりする余裕もありませんでした。でも、二人目は「かわいいなぁ」と思い、顔を見て、自分の子どもだと思ったし、余裕を持って子どもに接することができたのです。
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(社)日本助産師会の江角です。日本助産師会は助産に特化した専門職能団体です。昭和30年代までは、ほとんどの出産を自宅で産婆が対応していましたが、昭和30年代半ばから施設分娩が進み、自宅分娩は激減しました。
しかし、助産師のみで対応する自宅出産・助産院出産希望者は、ここ1ヵ年は常に約10,000人はいます。出生数から考えると、割合として最近は少し増えてきているのではないかと思います。
戦後、自宅で分娩していた頃の周産期死亡率は高く、施設分娩に移行し、確かに周産期死亡率は世界トップレベルまでに減少しましたが、この減少は医療介入のお蔭だけかというとそればかりでもありません。多くの方たちは医師がいるから安全にお産ができる、医師がいないとお産はできないという意識を持っています。リスクに対しては医療介入は重要ですが、半数以上の人は正常に経過し医療介入は必要としません。正常経過を辿り、医療連携が確保されていれば、安全性の問題はどこでお産しても変りません。かえって病院だから危険だということもたくさんあるのです。
日本助産師会は、開業助産師が中心ではありますが、現在は勤務助産師が7割を占めています。入会している助産師は助産師としてのアイデンティティーをしっかり持っており、本来の助産師の役割を果たしている人も多くいます。自立した助産師は正にドゥーラの役割も果たしているといえます。しかし、病院での助産師はシフト制により、本来の助産師の活動ができないのが現状です。今、出産に関しても安全性のみでなく快適性も求められています。安全性は何よりも大切ですが、施設で医療介入を受けながら行う出産が必ずしも安全ということにはなりません。一人の助産師が妊娠・分娩期間をずっと付き添い、ケアすることで、安心したお産が出来ることが、安全にもつながっているということを知っていただきたい。
現在、日本では産科・小児科医が減っていると言われる中、助産師にスポットが当てられるのは、本来の助産師活動への期待からと思います。助産師の存在をもっと知っていただき、ドゥーラ的な役割も含めて、お産ケアの専門職として活用していただきたい。しかし、現在26,000人の助産師が就業していますが、本来の助産師としての役割を果たせる人は数少ないのが現状です。日本助産師会では、助産師が助産師らしい仕事ができるように、研修・サポート体制を整えています。施設の中では診療報酬等の縛りや過激な勤務体制もあり、勤務助産師がドゥーラの役割まで果たすことが難しくなっています。施設こそ、ドゥーラの必要性があると思います。
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◆ 「“during childbirth”という言葉がでてきましたが、ドゥーラのサポートは出産後どのくらいの期間行われますか?」
・・・分娩時のサポートが主体ではありますが、妊娠期から子育ての時期まで長くサポートしています。アメリカでは、一般的なのは、産褥期のドゥーラの場合は、産後一週間は必ずサポートを行い、産後一ヶ月くらいサポートをします。妊娠期からサービスを始めることもあれば、出産の準備で始めることもあります。
◆「アメリカでのドゥーラの使用率と費用は? 職業としてのドゥーラに資格は必要ですか?」
・・・2002年の調査では、分娩する人の5%がドゥーラに付き添われています。費用は$800〜1,200ですが、料金設定はドゥーラが自分で行っています。ドゥーラの養成プログラムは「CRNドゥーラ研究室」最終回で紹介していますが、組織が全米に4つか5つあり、それぞれが独自に認定しています。16時間〜3日間程度のワークショップを行い、実習を3〜6件、お母さんや医療スタッフからの推薦状をもらい、レポート、出産準備教育クラスを見学して、5〜8冊の本を読み、認定試験がある組織もあります。救命処置の研修を義務づけているところもあります。組織の倫理指針などに同意してサインして認定することが多いです。
◆「施設で働く助産師はドゥーラ的な役割を担えない現状にあります。数年前に日赤医療センターを取材した際、“ラ・レーチェ・リーグ”のママサークルがセンターで講習をしていました。同じ母親同士、同じ目線で後輩のお母さんをサポートしていました。日本の先輩ママたちがドゥーラ的役割を果たせるのではないかと思いますが、いかがでしょうか?」
・・・母親同士の助け合いは、ドゥーラと同じような意味合いがあると思います。しかし、そのような助け合いは、先進国ではなくなりつつありますので、ドゥーラという専門職が重要だと考えます。母乳で育てようと思えば思うほど母乳は出ないもの。エモーショナル・サポートが重要なのです。
また、NYで、新米ママの母乳保育の成功率を調査した研究があります。実母が近所や郊外に住む場合と、遠隔地に住む場合で、成功率が違っていました。女性は、妊娠・分娩・育児の時期には感性が高ぶるので、実母との距離のような条件にも微妙に反応します。エモーショナル・サポートの重要性がわかります。
◆「雑誌の編集をしています。読者たちは、お産そのものに対しての満足度が低い傾向があり、二人目は助産院での出産希望者が多い。一人目の出産は流されるまま病院で出産する傾向があります。病院を選ぶ基準は、食事の豪華さなどの物的なメリットになっている。自分の出産をコントロールしようとする意識は特に一人目では皆無といえる。日本女性の意識は、医者に言われたことが絶対で、自分でどうしようということは考えていない。アメリカ、中国などの女性の意識はどういうものか教えてください。」
・・・アメリカでは1990年代半ばまでにお産の施設化が完了しました。60年代のフェミニズムの波で、女性のお産に焦点があたり、母乳哺育や出産準備に関する専門家が生まれました。フェミニズムの動きがあるかないかが、アメリカと日本の大きな違いだと思います。日本の女性は、「自分が悪いのではないか」や「みんな我慢している」と思って声をあげることをあまりしていないように思います。皆が自分のお産をコントロールしたいという気持ちを持つようになればよいですね。
あくまでも個人的な印象です。中国では、祖母の世代はお産は危険なものと思っていました。女性にとって出産は、一つの難関を越えるという考えで、痛みは当たり前という意識です。医学が発達し、現代の女性は痛みがいやだという意識が多いです。帝王切開率も、調べたわけではありませんが、印象としては日本よりも高いと思います。
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