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チンパンジーの観察をしていて,面白かったことは何か。
児童 チンパンジーの観察をしていて、面白かったことは何ですか。
グドール先生 最も面白かったことを選ぶのはとても難しいですが、私個人としては、子どもの成長を見たり、お母さんがそれぞれいろいろな方法で子育てをするのを見るのが興味深かったです。子育ての方法によって、子どもが成長したときにどのような行動をとるかということも。なぜなら、チンパンジーの世界にも、いい母親と悪い母親がいるからです。
児童 チンパンジーに名前をつけていますが、どうやって見分けるんですか。
グドール先生 彼らになれ親しむと、その顔が全部違うのがわかります。それがわかるためには、2,3か月いっしょに過ごさなければなりませんね。


 
チンパンジーはお互いにしゃべれるのか。
児童 チンパンジーはお互いにしゃべれるんですか?
グドール先生 そう、授業のはじめに私がしたような、声を色々ききました。彼らはポーズやジェスチャーも使います。例えば、今あなたにある声をジェスチャーしてみます。どんな意味だと思いますか?
「ア.ア.ア…。」(声にジェスチャーを加えて。)どんな意味でしょう。
児童 「あっちへ行け。」ですか?
グドール先生 その通り。赤ん坊が母親をなくしたり悲しいとき、こんな声をだします。「ホー、ホー、ホー…アー、アー、アー…ホー、ホー…。」これが長いこと続きます。
彼らはもっとたくさんの声を持っています。でも、私たち人間が、最も洗練された話す言語を発展させてきた生物なのです。
児童 チンパンジーがヒヒを食べるのをビデオで見たのですが、他にどんな動物を食べますか。
グドール先生 そうですね。アフリカでも違う地域ではそれぞれ違った動物を食べます。だいたい、若いサルや、繁みの昆虫、山羊位の大きさのアンティロープ、それに野豚などです。
でも、年間通してみると、肉を食べる割合は2%くらいで、とても少ないんです。
児童 チンパンジーが一番好きな食べ物は何ですか。
グドール先生 果物です。たくさんの色々な種類の野生の果物が好きですね。でも、木に新しい食べ物がなると、変わったものだということで、もっと喜びます。例えば、違う種類の種や、違う種類の新芽など。彼らの好きなあらゆる種類のものですね。
児童 魚は食べるんですか。
グドール先生 アフリカのどの地域でもチンパンジーが魚を食べているという報告は一件もいままでありません。
でも、バブーンは魚を食べます。
児童 道具はふつうどんな時に使うのですか。
グドール先生 木の小さな穴や土の中から虫を取るのに使います。これについてはもうお話しましたね。木から水をとったり、ものを調べたり。
アフリカのそれぞれ異なった地域のどこでも、調査されたすべてのチンパンジーが、それぞれが違ったものを違った目的で使う、というのはとても興味深かったですね。ですから、あるチンパンジーが何か新しいことを発明して戻ると、彼らにはよく見て学ぶという習性がありますから、他のチンパンジーはじっと見るわけです。そしてその一つの行動が彼らの文化の一部となっていくのだということが想像できるでしょう。
児童 チンパンジーは狩りのとき、道具を使いますか。
グドール先生 そうですね、一度、石を投げているのを見たことがありますが、それはブタを走り出させるためのようでした。石を投げることでブタが走り、その投げた石で子ブタをつかまえるんです。
ですから、道具は主に色々な種類の食べ物をとるのに使われます。木の小さな穴から水をとるのにも使います。葉っぱをもんで、水を吸うんです。
少し恐ろしげなものがあって、どんなものか知りたいときにも、長い棒を使ってそれにさわり、匂いをかいだりします。
児童 チンパンジーは仲間と食べ物を分け合うことがあるんですか。
グドール先生 狩りの後、オスが大きな動物の肉のかたまりを手にいれたときは、友だちと少しずつ分け合います。そして西部アフリカでは、これくらい大きな(50センチほどの)果物があるんですが、めったにとれません。それも、同じように分け合います。
児童 チンパンジーはけんかをするんですか。
グドール先生 ええ、しょっちゅうです。ふつうは、けんかしているとお母さんが来て、両方の子の頭をはたいて「おだまり!」って言います。それから、大きな一番偉いオスがそばにいると、そこへ行って仲裁してやめさせたりもします。
児童 親子の中でだれか死んだとき、チンパンジーはどこかに埋めたりするんですか。
グドール先生 いいえ、埋めたりはしません。お母さんは死んだ子どもの体を何日も何日も抱きしめて過ごします。そしてやがて森のしげみの中に置き去りにしていきます。お母さんが死ぬと、子どもたちは何度も繰り返しそのそばに行って、見たり、毛づくろいをし、そしてやがて去っていくのです。


 
お父さんは家族の中でどんな役割をしているのか。
児童 チンパンジーのお父さんは,家族の中でどんな役割をしているのですか。
グドール先生 とてもいい質問ですね。ふつうは、どのオスがお父さんなのかを知ることはできません。一つの群れにいる10匹くらいのすべてのオスが同じメスとつがうことができるからです。でも、実際、必要なときには、すべてのオスがその群れのすべての子どもに対してお父さんの役割をします。世話をしたり、助けたり。
その上、彼らは自分たちのテリトリーをパトロールして回って、外敵を遠ざけたり、群れの子どもやメスたちのために食べ物を確保するという大切な役目も持っています。
児童 チンパンジーの家族はだいたい何匹くらいで形成されているのですか。
グドール先生 2匹か3匹です。ですから、さっきスライドで見てもらったフィフィの家族は普通とは違ってかなり多いですね。周囲の人間同様、死亡率も高いんです。
児童 チンパンジーは最高何匹くらい産めるんですか。
グドール先生 そうね、それはまだわかりません。フィフィが何匹産めるかわかるまで、あと何年か待たなければ。彼女は今までに8匹産んで、1匹だけ死んでいます。おわかりでしょうけれど、アフリカに住む人間たちとも同じです。子どもを多く持ちすぎて、色々な問題が起こっています。チンパンジーの多くは2匹以上産みません。つまり、小さな地域に住む数は何年たっても変わらないということなんです。ですから、自分たちの環境を壊していないんですね。
児童 チンパンジーは一つの群れに何匹くらいいるのですか。
グドール先生 私たちの地域では50匹です。50匹のうち、大きなオスが10匹、それより少し多いメス、子ども、そして若者という構成です。でも、若いメスはしょっちゅう他の群れに移っていきます。ですから、フィフィの2匹の娘のうち、ファニーはお母さんと一緒にいますが、フロッシーはとなりの群れに移っていきました。
児童 フィフィ以外のフローの子どもはどうしているんですか。
グドール先生 全部死んでしまいました。他の、フレーブンはポリオにかかり、フィカンは一番偉いオスになりましたが、10年前に死にました。フレッズは、スライドを見ていただいたときに説明したように悲しみのあまり死にましたし、最後の赤ちゃんはフローがとても病気が重くて面倒を見られなかったため、死んでしまいました。


 
なぜチンパンジーは減ってしまったのか?
グドール先生 私が1960年に調査を始めたときには、だいたい100万から200万匹のチンパンジーがアフリカにいたと思います。そして今では、せいぜい12万匹くらいかもしれません。その12万匹のうちの多くが、21の国にちらばっているので、ゴンベのようにおおくの群れがほんの小さな森に孤立した状態で住んでいるのです。そこで、みなさんに質問させてください。どうして彼らはいなくなっているのだと思いますか。何か理由を言ってみてもらえますか。

<児童の手が一斉にあがる>
児童 環境汚染などでいなくなった。
グドール先生 それほど、汚染されてはいないんです。それほど多くの工業があるわけではないので。次の人に聞いてみましょう。ほかに考えていた人は?
児童 人間が森を切り開いて、チンパンジーたちの住むところが減っていったから。
グドール先生 そうです。それがまさに理由のひとつなんです。でもほかにも理由があるんですよ。だれかほかの理由を思いつきますか。
児童 食べるためや、毛皮を売るためにつかまえる人がいるから。
グドール先生 とても重要な理由ですね。何百年という間、狩人たちは自分たちの村の生活ために色々な動物を殺して食べてきました。でも今では、問題は大きな材木会社が森の奥深くまで道を作ったことにあるのです。これらの道は森の生き物にひどい影響を与えました。まず、人々が道に沿ってやってきて住み始め、自分たちが住むために木々を切り倒していきます。
それに、チンパンジーはとても繊細で、ささいな伝染病にもかかってしまうんです。伝染病に対する抵抗力がなく、病気のことも知らず、はしかやポリオなどの病気で死んでいきます。
そして人々は小さな罠をしかけて、食べるためのアンティロープをとろうとします。チンパンジーはその罠に手や足を捕えられてしまいました。人々は以前は木のつるで罠を作っていましたから、チンパンジーが捕えられても時間がたつと、つるがほどけました。今では人々は針金で罠を作ります。ですから、チンパンジーは手や足から罠をはずすことができません。もし手や足がもげてしまったら、みんな大きな傷を負って死んでしまいます。そして今、狩りは商売のための狩りになっています。狩人たちはさらに性能のよい道具を持って町からやってきます。伐採の跡や道を通って狩りにでかけます。そして今や彼らは目に入るものはすべて、チンパンジー、ゴリラ、ゾウ、そして何もかも、小さな鳥や虫まで撃つのです。それを日干しにして、トラックにつみ、町に行きます。そして、今でもまだ、生きた動物を売買する人たちが何人かいて、狩人を送り込みますが、彼らは子どもをとるためだけに、お母さんを殺してしまうのです。
ですから、私たちがチンパンジーを救うためには,人々のしているこのようなことと戦わなければならないのです。

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