題 名 | : 香山リカ(パネルディスカッションパネラー)さんより |
投稿者 | : シンポジウム事務局より |
日 付 | : 1997年 02月26日(水) 19:40:57 |
異性への恋愛感情の前にだれもが体験する同性への友情。こういう「 いつもいっしょにいたーい」という友人のことを精神科医・サリヴァン はチャム(chum)と呼んで重要視し、「チャムとすごす時期は人生 の静かな奇蹟」とまで言いました。 でも、男どうし・女どうしの友だちだけがチャムとは限りません。そ れに、チャムとのつき合い方だっていろいろ。電話でのおしゃべり専門 の子、パソ通のチャット親友、プリクラ交換友だち、ベル友、対戦ゲー ムのライバル・・・、なんだって大切なチャムになります。極端なこと を言えば、ゲームのキャラクターやたまごっちが親友だっていいではあ りませんか。 現代の都市社会では人間関係が疎遠になりがち、と言われますが、そ ういった殺伐とした時代の隙間を縫うようにして、子どもたちはテクノ ロジーや流行現象を利用しながら新しい友情の形態を作り出しているの です。 そのことを私は、現代を闊歩する元気な子どもたちからだけではなく 、心になんらかの問題を抱えて精神科の外来を訪れる若者を見ていて強 く感じることもあります。というより、通常の人間関係が負担になって しまう彼らこそ、より切実にデジタルな関係を求めていて、そこでなら 自由に振る舞うこともできるのだ、と言うこともできるでしょう。 デジタルな友情の中にも、精神科医サリヴァンが強調したチャムの関 係は育つ。私はそう思っています。