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パネル・ディスカッション「21世紀の子育てを考える」
パネリスト: サラ・フリードマン(米国NICHD研究員・発達心理学)
松本寿通(福岡市医師会乳幼児保健委員会委員長・小児科医)
内田伸子(お茶の水女子大学教授・発達心理学)
今井和子(東京成徳短期大学教授・保育学)
司会: 牧田栄子(育児ライター)

牧田氏:
 会場には、保育園や幼稚園の先生、小児科のお医者様、研究者の方、それから働くお母様方がいらっしゃっていると伺っております。「働く母親の支援」というテーマには大事な方々ばかりですが、お話に入る前に、私から今、家庭で育児をしている母親について、まず1つのデータを紹介させていただきます。

 図1は私が関わっておりました、『たまごクラブ』*1、『ひよこクラブ』*2、『こっこクラブ』*3の媒体資料作成のために行った読者アンケートから出したものです。ちなみに、この3誌で毎月約76万部出ております。
 このアンケートを見ますと、7〜8割の母親が現在「専業主婦」です。しかし、その8割以上が「働きたい」と思っています。とくに「3歳になってから」「保育園に預けて」働きたいという人が目立っています。そこに乳児保育の難しさが現れているのではないかと思います。
 働きたいけれど、働いていない理由の1つには、まず「仕事がない」、あるいは「仕事をしていないと保育園に入れない」、「乳児保育を行っている園が近くにない」、「保育料が高い」など、システム的な問題。さらに、「3歳までは母親が育てないと、将来子どもに問題が出るのではないか」、「保育園に預けて大丈夫だろうか」という、母親の気持ちや意識があります。
 これが雑誌から見た母親の現実で、若い母親たちは、相変わらず子育てに不安を持ちながらも一人で抱え込んでいる現状が見えます。午前中のフリードマン先生のご報告にあった「どのような保育を受けるかは親が決める」、「母親も保育士もセンシティビティが高いことが大事」、「保育の質が子どもの発達に影響する」などのお話は、働く母親はもちろんのこと、家庭で育児をしている母親にとっても、あるいは、これから結婚して出産して働くかもしれない「働く母親」予備群に対しても、大きな勇気づけになったのではないでしょうか。
 と言いつつも、NICHDのデータは、あくまでもアメリカで実践された調査。はたして、日本でどう活きるのか、あるいは日本の実状に当てはまるのか。そこで、まずパネラーの先生方にNICHD研究をどうお聞きになったのか、さらに質の高い保育とはどういうものかについてお話を伺いたいと思います。
 まず、発達心理学では有名な内田先生――ぜひ内田先生のお話を聞きたいという参加者カードが目立っていました――よろしくお願いいたします。

*1 妊娠中から出産までのお母さんを対象とした雑誌
*2 0〜1歳半までの子どもを持つお母さんを対象とした雑誌
*3 1歳半から3〜4歳位までの子どもを持つお母さんを対象とした雑誌
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