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小林登文庫


「子ども学」によって21世紀こそ子どもの世紀にしよう―パラダイムの転換を求めて―

掲載:2000/4/21

「2.20世紀末の兆候」へ
1.人間の歴史の中での「今」を考える。

 2000年、平成12年は、今世紀(century)最後の年であるとともに、新しい千年紀(millennium)の始まりの年でもある。"century"も"millennium"もキリスト中心に歴史の上で年を数える基準である。

 "century"は、キリストの誕生した年を元年として計算しているのは周知のとおりで、民族主義の立場をとれば、いろいろな世紀のあり方が出てくる。わが国では、明治5年(1872年)、初代天皇の神武天皇即位の年を西暦紀元前660年と定めて、これを皇紀元年としたが、現在は用いられていない。また、イスラム教徒は、西暦662年のヒジュラ(マホメット聖遷)をイスラム紀元元年としている。

 英語の"century"は、ラテン語の"saeculum"(世代・時代・100年)から派生したフランス語から始まり、12世紀には用いられていたという。しかし、現在の第何世紀という表示は、17世紀に入ってからで、意外に新しいものなのである。

 100年に対する1000年の区切りが"millennium"であるが、イエスの到来(または復活)から(再臨)までの期間を意味する。西暦1000年ごろに大きく取り上げられたが、現在は主として考古学で用いられている。

 "millennium"をどこから数えるべきかは難しい問題であるが、記録に残っている文化・文明の始まりから取るとすれば,第1の"millennium"は、紀元前、有史以前のそれであり、神話時代に始まりエジプト文明・ギリシャ文明に終わったものであろう。勿論、化石人類学から見れば人間には500万年の歴史があり、その前に"millennium"を何度も繰り返していたことになる。

 第2の"millennium"では、神話から脱却して、キリスト教を含めて世界宗教が体系付けられ、古典文化を創った時代である。もっとも、キリスト誕生からを厳しくとれば、第1世紀から始まるこれが最初の"millennium"になる。

 それに続くのが第3の"millennium"であり、それは、昨年の1999年をもって終わったことになる。この"millennium"では、国家が組織化され、文化が文明化された時代である。特にその最後の100年の20世紀は、科学・技術の進歩によって文明化は加速され、波乱万丈の時代となった。

 この"millennium"の中で最も重要なことは、人権が確立したことであろう。人権という考え方は、マグナ・カルタによって国王に対するイギリス貴族・僧侶の権利として始まった。その後、イギリスで何回かの市民革命を経て、人権は徐々に確立したのである。

 続いて、イギリスからアメリカにわたったピューリタンの人々による200年前のアメリカ独立戦争、続いてフランス国内ではじまったフランス革命でやっと「市民の権利」になった。しかし、それは「男性の権利」であった。国際連盟に続いて国際連合によって、第二次世界大戦後やっと、女性や子どもにも、それが認められるようになった。子どもの権利は1989年で、人間の権利として最後のものであった。権利の確立は、まさに第3の"millennium"の大事業であったと言える。

 そして第4の"millennium"が今年始まったことになる。
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