●HOME●
●季刊子ども学へ戻る●
●バックナンバーへ戻る●
●目次へ戻る●



逸脱する子ども

 第4号の特集のテーマは「逸脱する子ども」。90年代の日本では大人に反抗して規範からはみ出すいわゆる不良少年・不良少女よりも、むしろ、めまぐるしい現代社会に過剰に適応しようとして、従来の価値観から大きくはみ出してしまう子どもたちが目立ってきた。

 あらゆる欲望が市場にあふれ返り、すべての価値観が相対化されたバブル時代。大人たちはお金に換算できるものだけを、至上の価値と祭り上げ、社会の規範をなし崩しにしてきた。子どもたちも、己の欲望を全開にすることで市場となれ合い、そのことで無意識のうちに従来の価値観を覆しているのではないだろうか。

 本特集では、昔ながらの盗みや暴力などの少年犯罪ではなくて、授業無視、ブルセラ、クスリ、死後の世界への逃避などを中心に、動機らしい動機もない逸脱現象にスポットを当てた。そのような逸脱現象には大人社会への反抗というような強い意思は感じられない。むしろ、歯止めのきかなさが常識の一線を越えてしまったというような、ある種のだらしなささえ感じさせる。逸脱の背後には子どもたちのメッセージが込められている、というセオリーが未だに通用するのなら、本特集から読みとれる子どもたちのメッセージは、立ち向かうべき規範を失った子どもたちの苛立ちだろう。

Copyright (c) 1996-, Child Research Net, All rights reserved