評論家 小浜逸郎
窓際でぼけっとすること、これが学校的なものからの逸脱の気分の始まりを象徴している、と小浜氏は記す。学校から空間的にはなれることや、学校の中で破壊的な行動に走ることだけが「学校的もなのからの逸脱」ではない。氏は、逸脱を促す最も基礎的な兆候は、授業中における身体と意識の剥離にこそあると考える。 |
上智大学文学部心理学科教授 福島 章
福島氏は、「性の逸脱」の概念に疑問を投げかける。この30年で、だれしもが逸脱だと考える強姦や強制わいせつで補導される男子少年の数は減少の一途をたどり、女子少年の「性の逸脱」と警察がとらえている、条例による「みだらな性行為」や特別法による売春行為などの不純な性行為も半分の数値を示している。氏はいくつかのデータを用いて、男女とも約2割の子どもしか高校時代に初体験をしていない現状と、8割近くの子どもが「愛さえあればセックスをしてもかまわない」と答えている現状から「逸脱」を考える。「子どもの性行動は子ども自身の性意識とは大きく食い違っている。これは、数字だけを見ると、親の規範意識とはほぼ一致している。これは、先ほど指摘した、思春期まで続く密着した親子関係と無縁ではなかろう。言葉をかえて言えば、日本の子どもたちの間には『生物学的なプログラムと比較した性行動の大きな遅延』と表現できる『逸脱』が起こっている。しかし、日本の子どもたちには、思春期を迎えてから約10年間を禁欲的に送ることが、親を代表とする社会によって強く期待されているのである」 |
科学警察研究所・防犯少年部犯罪予防研究室室長 清永賢二
非行少年の数は10年前の68%にまで減った。大人たちが封じた非行エネルギーは、内へ内へと向かい、暴走族の時代→校内暴力の時代→いじめの時代という変遷を辿り、結果として少年の群れは木端微塵に打ち砕かれ、私たちの視界から消えた。しかし清永氏は、もともと少年というものは押しつけられた社会規範や秩序に反抗するもので、「逸脱」の無い社会こそ逸脱しているという。 |
東京都立大学助教授 宮台真司
「郊外は、伝統的共同体とも都市的空間とも異なった、いわばコミュニケーションチャンスから『二重に疎外された空間』」であると宮台氏は規定する。その郊外では、女子高校生のテレクラに代表される「電話風俗」をはじめ、都心のそれよりも圧倒的に風俗の「過激」度が高い。氏はこの郊外を「コミュニケーションの空白地帯」という。 |
映画制作者 羽仁未央
22歳のときに日本を離れて以来、香港暮らし8年目を迎える羽仁氏は、ドキュメンタリー映画制作会社の社長兼監督として活躍している。小学校四年生のときから学校に行かなくなり、パリ、東アフリカなどで海外生活を送る。日本の子どもとはかなり違った子ども時代を過ごした氏は、「逸脱」を地でいく人である。 |