「少子化時代の子ども」というテーマで始まったシンポジウムの第一部は、子ども学研究会の代表である小林登氏の開会の辞で始まった。子どもの問題に関心を持ったさまざまな分野の人々が話し合いをし、できれば共通の考える基盤を作りたいというのが「子ども学」の基本的な考え方である。「子ども学シンポジウム」もその趣旨のもとに行われ、経済学、社会学、心理学、文化人類学、小児科学、システム工学、大脳生理学など、さまざまな分野の研究者がパネリストとして参加した。 |
セッション2のテーマは「少子化時代と社会」。経済学者の飯田経夫氏は、戦後の日本が追求した「アメリカン・ウエイ・オブ・ライフ」が行き詰まったことで、豊かさの指標が失われ、そこで少子化についても議論されることになったのではないかという。「アメリカン・ウエイ・オブ・ライフ」に代わる新しい豊かさなり、新しいライフスタイルが見つからない限り、少なくとも少子化問題の答えも出てこないのではないか、というのが氏の考え方だ。 |
お茶の水女子大学助教授 耳塚寛明
少子化社会のもたらす学校教育への影響は、過去に学ぶことのできない「新しい危機」であると耳塚氏は予見する。1994年に186万人いた18歳人口は、2010年には120万人へ激減する。大学への合格率90%の時代を迎えることになる。この数字は「実質的な無選抜状態」を意味し、氏は学校教育の冬の時代が到来すると危惧する。 |
異文化ジャーナリスト あわやのぶこ
女性の議員が41%を占めるスウェーデンでは1995年の秋、国会内に託児所が開設された。このような姿勢からもうかがえるように、スウェーデンにおいては子どもという存在が公的に積極的に認められている。「スウェーデンは『子ども大国』」と形容するあわや氏は、先進国に多くみられる少子化をスウェーデンが吹き飛ばした理由として、いくつかの法が制定されたことを示しながら、最も画期的な法制度の一つとして「両親保険」と呼ばれる出産時の有給休暇制度を挙げている。 |
ジャーナリスト 熱田恵美子
社会的な環境変化が子育てしにくい状況を生み出したのだから、社会的に子育てしやすくしようと、厚生省が打ち出した「エンゼルプラン」も一応その構図をとっている。けれども、果たして国はどこまで本気で支援の手をさしのべようとしているのか、と熱田氏は疑問を投げかける。「子ども未来財団」や「緊急保育対策等五ヵ年事業」によって民間企業が子育て支援事業に進出するための財政的援助を行ってはいるが、もともとその要因となる土壌を生み出したのは、国の公的保育サービスの不十分にある。エンゼルプランの中で特に氏が問題とするのは、保育所入所について「措置入所」から「直接入所」方式導入をうかがわせる「保育所制度の改善・見直し」という一文である。 |
日本総合愛育研究所主任研究員 加藤忠明
1990年頃から都市部の大病院では小児科の廃止や縮小の動きが見られる。その大きな原因が、病院経営の悪化であり、中でも少子化のために患者が集まらない小児科は病院内で問題とされている。さらに、医学部卒業生の小児科入局数の減少や、子どもが病気になりにくくなった現状がこれに拍車をかけている。加藤氏は、大病院で小児科が廃止・縮小されるのはある程度やむを得ないとしながらも、「小児科医の役割は今後、社会から求められる面も大きい」と提言する。 |
評論家の小浜逸郎氏をホスト役に、1年間にわたって、「いじめ」について行われた
シリーズ対談の第1回目。ゲストは刑事法学の立場から、現代人の責任の問題を問い続
けている佐藤直樹氏。対談で強調されたのは、子ども問題全般を、単に教育論の枠内だ
けで考えるのではなく、もっと広い視野の中で、「大人−子ども」問題として見つめ直
すべきだという点である。 |