●HOME●
●季刊子ども学へ戻る●
●バックナンバーへ戻る●
●目次へ戻る●



消費社会と子ども

 第9号は法政大学の稲増龍夫氏の監修による「消費社会と子ども」だ。子どもは学校と家庭と地域の存在として語られてきたが、現代のような成熟消費社会では、まずマーケットの存在として語られなければならない。子どもたちの深層心理にもっとも大きな影響を与えているのは、先生や親よりも、テレビタレントであり、アニメの主人公である。子どもたちの欲望は、いかに魅力的な商品を消費するか、いかに魅力的なメディアと接触するか、いかに魅力的なイベントに参加するかに向けられ、すべてのものはカタログ的なまなざしで眺められる。それは子どもたちのお小遣いの額が増えたためにぜいたくをするようになったなどという、単純な教育的まなざしをはね飛ばす欲望の構造上の変化だ。

 本特集では、「消費社会と子ども」とがきわめて相性が良く、両者がいかに本質的な部分で関わっているのかを示している。さらに、そのように消費文化と相性のいい子どもたちが、消費とまったく無縁な学校文化の中に置かれていることの矛盾を指摘している。学校が守ってきた規範=禁欲的な生産の論理は、今や子どもたちともっとも相性の悪い組み合わせになっている。そのことは学校文化の未来を考える際に、決して避けて通ることはできない問題点だろう。消費社会が与えるもの=悪という古典的な図式をすみやかに捨てて、消費社会論の視点から再編された新たな学校教育論が求められる。

Copyright (c) 1996-, Child Research Net, All rights reserved