法政大学社会学部教授 稲増龍夫
近代における産業化の急速な発展によって訪れた消費社会は、子どもという存在の意味を大きく変えたことを稲増氏は指摘する。「一つは、彼らが、『生産』に従事していない『未熟者』という社会的負い目から解放されたことである。もう一つは、子どもゆえの『進取の気性』(それは反面『飽きっぽさ』でもある)から、彼らが、変動する市場のなかでの、潜在的な消費リーダーの役割を担うようになっていったことである」。 |
関西大学社会学部教授 岩見和彦
近代の学校制度は子どもを「学校の子」としてとらえ、生徒役割を遂行させることで子どもを社会化するシステムであり続けてきた。ところが、今、この学校文化がゆらいでいると岩見氏は言う。「学校での知育も結局は受験知として手段視され、その面では塾などの専門機関のほうがより効率的に提供し出したものだから、子どもを囲い込んでおく力が相対的に弱まらざるを得なくなった」ことに加え、「消費社会に生きる子どもたちの欲望がその豊かさをバックに家庭教育と学校教育による社会化をはねのけ、その直線的な充足に向かい出した」という事情があるからだ。 |
スクールソーシャルワーカー 山下英三郎
校則という学校規範と子どもたちの問題を論じる際に見落とされがちなのは「消費」という側面である。スクールソーシャルワーカーの山下氏は、「校則」は学校から「消費」の流入を防ぐ「防波堤」の役割を果たしているととらえる。 |
駒澤大学文学部教授 坪井 健
日本とアメリカの高校生のアルバイト観を大きく分け隔てるもの――それは両国の持つ社会的成功イメージの違いだ、と坪井氏は分析する。つまり、日本では「出世」が、アメリカでは「自立」が重要視されているのだ、と。 |
編集者 木村裕美
「……私たちは日常のあらゆる場面でいわゆる『キャラクター商品』に出くわしている。わざわざお金を出してキャラクターを選んで購入している場合もあれば、ほとんど無意識に『オマケ』としてついてくることもある」。60年代以降の子どものライフスタイルの多様化とともに急速に成長してきたキャラクタービジネスは、子どもたちが生まれて初めて自分の意思で消費行動を起こす瞬間から関わってくると、木村氏は分析する。「そのとき選ばれたキャラクターは一生の思い出になるわけだし、その瞬間をいかにうまくとらえておくかをキャラクタービジネスにかかわる者たちはキーワードとしているのだ」。 |
シリーズ第2回目のゲストは文芸評論家でもあり、現役の高校教師でもある佐藤通雅
氏。佐藤氏は、いじめ現象が語られる際に、子どもの変貌ぶりばかりが問題にされるが
、若い教師や親たちの変化にも目を向けるべきだという。トラブルを解決していく上で
前提となってきた精神的な枠組みが、子どもたちの間だけではなく、実は、まわりの大
人たちの間でも成立しにくくなっているというのである。 |