静岡大学保健管理センター助教授 石川憲彦
石川憲彦氏はストレスや心身症の問題点を「共存」というキーワードによって明確にしていく。一般的には共存や共生というキャッチフレーズは、症状の改善という文脈で語られるものであるが、氏は「改善の見通しの定かならぬ」共存を念頭において話を進めていく。つまり、氏は「治療する・よくなる・治るといった言葉によって治るものと治らないものを対立に追い込む」のではなく、効果が無関係なところで、初めて共存が可能になると考えている。 |
京都教育大学助教授 松浦賢長
子どもの慢性疾患に関しては、子どもの Quality of Life(QOL:生活の質)を優先させようという考え方がさかんだ。「以前は、十分な安全をとろうとするあまり、子どもの生活面において『制限』や『規制』を優先するという考え方が幅を利かせていたような側面もみられた」が、「現在では、子どもの安全も考慮に入れつつ、最新の医学知見をもとに、できるだけ『制限』や『規制』をゆるやかにし、かつ、子どもたち自身が自分たちでケアしていかれるように、そして子どもが最大限の成長をとげられるように援助するということが基本に」なってきている。 |
女子栄養大学助教授 太田恵美子
太田恵美子氏は、子どもの体に起きている日常のトラブルが「より多様化、深刻化」してきているという。「大人の夜型生活や便利さを優先する省エネ傾向の生活スタイルがそのまま乳幼児の生活に表れている結果」だとして、「乳幼児の生活における夜型化の進行、早朝からのテレビ・ビデオ視聴、身体活動の減少などは、子どもの目の輝きを奪い、生命力さえも脅かしかねない状況だと」危機感を募らせる。 |
日本総合愛育研究所地域保健担当部長代理 小山 修
セルフケアが登場したのは、「1970年代後半の欧米からであると言われている。それはとくに、感染症から成人病や慢性疾患対策へと疾病構造が転換しつつあった先進工業国において」であり、「一般の人々や患者を単なる対象者として観るのではなく、人々が行っている日常的な自己管理行動を見直し、新しいシステムのなかに位置づけていこうというものであった」。自己管理行動とは、簡単に言えば、睡眠を十分にとること、入浴を定期的に行うこと、トイレでは手を洗うこと、かぜなどの軽い病気の判断や簡単な傷の手当は自分で行えることなど、専門家の援助なしに行う保健活動全般のことである。 |
武谷病院小児科部長 甲賀正聰
近年になって、子どもの病気が変わったということは、多くの人が指摘するところである。それにともなって、医学の考え方も変わり始めている。甲賀氏はその流れを端的に「『集団の医学』から『個の医学』へ」と表現する。 |