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子ども同士の世界 |
子どもの世界が変容していることが頻繁に指摘される。子どもが外で遊ばなくなった。子どもがすぐに疲れたと言う。弱いものいじめを平気でやるようになった。友達と一緒にいるのに話をしない。などなど、数え上げればきりがない。子どもが大人の考える子ども像から大幅にずれている。大人たちの誰もが漠然とそんな感じを持っているのだ。そして、すぐに「大人は彼らのために何ができるのか」という話が始まることになる。
しかし、素朴な疑問として、大人の思惑とは別に、子ども同士はどうしているのだろうか。大人からすればゆがみとして指摘されることも、子どもたちにとっては日常の出来事である。その中でどのような対処をしたり、どんなバランス感覚を発揮しているのだろうか。友達同士で、どんな空想にふけり、何を求めて街に出て行くのだろうか。
第16号の特集は東京大学の藤田英典氏(教育社会学)の監修により、子どもの人間関係、「子ども同士の世界」に焦点を合わせて考えてみたものである。各論文は、その多様な現象と側面、その背後にある構造や特質、子どもにとっての「子ども同士の世界」の意味などについて多角的に検討している。生活のゆがみをきびしく矯正しようとか、子どもたちをやさしく保護しようとかいった大人のまなざしからではなく、できるだけあるがままの、大人が関与しない世界での彼らの生活について考えてみた。
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