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学校の行方

 教育は「個人」と「社会」をつなぐ役割を果たすが、近年、その教育において、「個人」と「社会」のどちらを重視すればよいかのバランスについての明確な答えは出ていない。教育改革の必要性が言われる中、先頃出された中教審の答申をはじめ、一連の改革論議の中心にすえられた価値は、「子どもの個性」である。この「個性」重視のベクトルは、どのようにして現れ、どのような原理・思想に裏打ちされているのだろうか。

 本特集「学校の行方」は、耳塚寛明氏(お茶の水女子大学教授)の監修により我々が自明視して疑わない「学校」という制度・装置を成り立たせている思想や歴史を読み解き、なぜそれが改革の根本原則として維持されているのか、そしてそれに代わる学校教育の組織原理はどこにあるのかを探るものである。特集1〜3で繰り広げられるのは、具体的なレベルの問題に対する対処療法的なアプローチではなく、あくまでも「パラダイムとしての学校の行方」である。耳塚氏は、現在の改革論議では「個性化」が「社会化」よりも優先されており、ともすると「社会化なき個性化」が進められてしまうことに懸念を表している。この背景には、子どもの個々人の発達可能性は無限であり、それがある種の環境の中で開花することを期待し、学校や教員を個の可能性を拓く支援者として位置づける思想、すなわち「児童中心主義」があると氏は述べている。

 特集4では、特集1〜3とは別立てで、大学、中高一貫校の教師、民間教育機関など、多様な現場の11人の方々に教育改革・学校改革への提言をいただく「特別インタビュー」を行った。教育改革の今後の議論に向け、特集1〜3と併せてお読みいただきたい。

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