米国の軍医総監デイビッド・サッチャー将軍（医学博士） は、「青少年の暴力行為のための国家行動方針」を発表した。このレポートは、精神衛生問題を持つ子どもや青年への治療を向上させるための目標と戦略を概説している。レポートによれば、米国は、精神衛生の危機に直面している。10人に1人の子どもや青年が、障害を引き起こすほどの精神障害に苦しんでいるにもかかわらず、5人に1人以下しか必要な治療を受けていない。子どもの精神衛生問題の認識を高めること、精神障害に対する偏見を減少させること、子どもの精神衛生ニーズの認識を促進することなど、問題改善の計画をレポートは示している。サッチャー博士は、また科学的防止法や治療サービスを広く採用することや、子どもの精神衛生問題に対する継続的研究、公共政策の実施を奨励している。「潜在的な精神衛生問題をいかに早期に確認するか、子供の教育に関わるすべての人に教えなければならない。」とサッチャー博士は説明している。
（出所：米国厚生省。レポート全文はhttp://www.surgeongeneral.gov/cmh/childreport.htm）

　注：以上は、「3.Special Report Surgeon General: Youth violence epidemic not over」を要約・和訳したものです。

　カリフォルニア州サンノゼ市にある2校の公立小学校（社会的・学業的条件が一致している学校のうちから無作為抽出）の3・4年生（平均年齢8.9歳）の子どもと保護者を対象に，テレビ・テレビゲーム・ビデオゲームの視聴時間の減少と攻撃的行動や「こわ〜い世界」への認識に関する影響が調査された。

　1つの小学校の子どもは，6カ月にわたってテレビ・ビデオテープ・ビデオゲームの視聴時間を減らす「干渉プログラム」を18種類受けた。この「干渉プログラム」は，バンデュラの社会的認知理論に基づいており，研究スタッフによる30分〜50分のトレーニングを受けた担任の先生たちによって行われた。プログラムは，自己管理・テレビ視聴の記録などからなり，テレビ・ビデオ・ビデオゲームに費やす時間を減少させる動機を子どもに与えるものである。また子どもたちは，10日間，テレビなどを見ないことに挑戦する「TVを消そう」プログラムにも参加した。

　「干渉プログラム」の後で，任意に選ばれた6割の子どもは，遊び場での暴力や暴言などの攻撃性が観察された。親に対しては，子どもの攻撃的な行動や怠慢についてのインタビューを、子どもの行動について問うチェックリストに基ついて行った。今回子どもの攻撃性について調査する際、最も重要視するのは、仲間の子どもたちから調査対象である子どもに対してくだされる評価である。

　この研究により，「干渉プログラム」を受けたグループの子どもは，受けていない子どもよりも攻撃的発言が減少していることが，統計上明らかになった。暴力や親からの攻撃的行動の報告，「こわ〜い世界」の感覚については，統計上優位な差が認められなかったが，「干渉プログラム」を受けたグループの方が低い数値結果となっている。

　「テレビ、ビデオテープ、ビデオゲームに費やす時間を減少させるための『干渉プログラム』は、小学生の攻撃的行動を減少させる」と、研究者たちは結論づけている。「これらの調査結果は、メディアの暴力性への影響、および、子どもがメディアを見る時間を減少させることの潜在的なメリットを肯定している。」

（出所：Robinson TN, Wilde ML, Navracruz LC, et al.: Effects of reducing children's television and video game use on agressive behavior: a randomized controlled trial. Archives of Pediatrics & Adolescent Medicine 2001; 155:17-23.）