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Vol. 17, No. 4, April 2001
1. スケジュールをつめ込まれた子供 : ハイパー・ペアレンティングは避けるべき

スケジュールをつめ込まれた子供 :
ハイパー・ペアレンティングは避けるべき


アルビン・ローゼンフェルドイ医学博士・ニコル・ワイズ

 「ハイパー・ペアレンティング」とは、中産階級以上の家庭で広く見られる子育て方法を指したもので、我々が作った言葉である。これらの家庭において、親たちは、子供の学業、スポーツ、社会生活すべてに細部にわたって過度に関わっており、子供の環境を過剰に豊かにし、予定をつめ込みすぎてしまう状況がおこっている。

 今日の多くの子供が、学校生活以外に、少なくとも一つのスポーツチームに参加し、音楽、芸術、外国語のお稽古や家庭教師についている。ひとつひとつには価値があるかもしれないが、すべてをやるとなると、親や子供は疲れはて、子供の自立を阻害することになる。

 専門家はハイパー・ペアレンティングをどこで観察するか? そこらじゅうである。すでに豊かさを達成した親たちは、子供の「可能性」を「最大化」するために、子どもの生活をさらに豊かにしなければならないと感じてしまう。これらの親たちは、数学的能力を刺激するために、託児所でモーツァルトを流すとよいなどという最近の科学の報道に反応したり(専門家は疑わしいと知っているのだが)、運動神経の発達のために、おむつをしている子供を体操教室に登録したり、ゲームのルールさえわからないほど幼い子供を、競争心をあおるようなチームスポーツに参加させたりする。かろうじて目が覚めている子供を朝7時のピアノレッスンに座らせたり、いい大学に入れるよう高校生の履歴書を見栄えのいいようにする。

 多くの現代の親は、概念から大学まで、子供のために完全な教育を設計することが、親の基本的仕事と考えている。子供の成功(早く話し始めたとか、飛び級クラスにはいったとか、エリート大学に入ったというような「業績」によって定量化される)は、親の業績の測定法になってしまっている。そういうわけで、最も競争的なおとなのスポーツは、もはやゴルフではない。それは、ペアレンティングである。心の中では、予定をつめ込み過ぎだとわかっていても、そうしないことが、最愛の子供の将来を害するのではないかとの懸念が迫り続ける。

 ハイパー・ペアレンティング、予定のつめ込みすぎ、睡眠不足の子供には、多くの要因がある。メディアによって報告された最近の専門家のアドバイスは、このような育児方法はそれぞれ将来に決定的な意味をもつと言っている。スポック博士が親に自らを信用するよう促したにもかかわらず、今日の親へのアドバイスは、切迫感や権威によって、余計親の不安を熱狂へと高める。そして、過度の不安は、最悪の事態をもたらす。学校がさらに子供に圧力をかける。しばしば、税金の使い手として結果を出そうという政治的動機から、無限のように思える宿題をだしたりする。

 みな、未成熟が悪いということを知っているが、それは子供には許されるものだ。子供の発達が直線的であるという誤った信念は、狂乱につながっていく。なぜなら、早期に優れていることが、ずっと他人より先をゆくことを意味するからだ。それでは、早く文字を読み始めた子供は、10代になってSATテストの国語で高い得点を得るだろう。従って、親は、節目を早く達成し、スキルが早く上達するよう、子供に「ジャンプ・スタート」をさせなければならないと感じる。

 例えば、私立の教育プログラムにおける子供は、高い割合で、同年代の子供以上の成績を上げている。彼らは、更に成功するために、そこにいる。

 逆に、あらゆる面で発達達成度の低い子供は、緊急の介入が必要であるとしばしば見なされる。確かに、介入を必要とする発達上の遅れがある子供もいる。しかし、遅れている多くの子供は、治療なしに、小学校入学前の段階で、優れたスポーツマンや作文の書き手になる。

 絶え間なく予定やテスト、生活面に関して終わりのない評価(幼児の歩行速度に始まり、読解速度、テニス、バレエ、作文の成績にいたるまで)を、子供はどのように感じているだろう。もし、おとなが、生活のすべての行動を綿密に調べられ、成績をつけられたら、どのように感じるだろう(だれがすべてを支配する上司を持つのだろう)。例えば、夫や妻がそれをしたら、どんな反応をするだろう。自分を単に子供の立場に置いてみるべきだ。

 ハイパー・ペアレンティングは、子供の自尊心を傷つける。子供が、絶え間無い詮索から潜在意識に受けとるメッセージは、彼らが現在の磨かれていない状態で不充分であるということである。「もし私が親がいうとおり良い子ならば、なぜ 私は、さらに頑張る必要がるのか?」「私は、おそらくまったくだめなのだ。」この過剰なライフスタイルは、望ましくないビジョンとなる。これが、なぜ子供が親から逃げて、ゲームボーイ、任天堂や他のコンピュータゲームに没頭するか、なぜ非常に聰明な前途有望な学生が、これには価値がないと考え、早く脱落してしまうのか、の答えとなるだろう。我々は、このハイパー・ペアレンティングが、10代の子供で増加する精神衰弱、薬物乱用、性的「演技」の原因になっていると、疑っている。

 それでは、親は、何をするべきか? 予定でいっぱいの活動を10 パーセント程度削減することで、家族は健全さを取り戻すことができる。活動や実績に重きを置かないようにすることで、人格発達と対人関係が中心として、元に戻る。

 親は、彼ら自身のおとなの人生を楽しむべきである。それは、子供にとってさらに魅力的なモデルになるだろう。そうすれば、多くの親は、狂乱もなく利益を得るであろう。土曜日の夜、親が外出することは、家族のみなを助けるだろう。お互いに楽しむ親は、幸せで、リラックスし、そしてもっとも重要なことに、真に寛大である。子供と一緒であるとき、親は、ノンストップでアクティビティを考えるキャンプのコーチである必要はない。時折子供に退屈されることはむしろ良い。退屈を扱うことは、内面の生活、創造性、想像性を刺激する。子供は落ち着いて考え、想像し、内的世界を創り、内なる声を聞く時間が必要である。それが、独自の絵や普通でないストーリーを書かせる。

 確かに、親は、子供の人生が一人前になることを期待するべきである。しかし、子供に良い子で、知的で、愛することを示すことは、親が子供にできる最も建設的で(そして実に必要な)サポートである。これは、健全な成長を最大限にする。しかし、多くの親は、あまりに不安で、内側の確信を持てないでいる。または、それを表すことができない。これは、子供にとって有害なのは当然である。その代りに、しばしば無意識に、多くの親は、子供の将来が非常に心配であると述べている(動作、身振り、もしそうでなければ、現実の言葉で)。この潜在意識からのメッセージは子供の自尊心を害しうる。そして、親自身が満足するイメージを作成してしまう。

 幼少期は、準備期間で、十分ではない。子供は、パートタイムの給料の無い仕事のように動きまわるより、むしろ趣味や情熱を楽しむべきである。夏は、単に技術を洗練し、競争に引っ張り出される機会ではなく、楽しくあるべきである。子供は、優れているべきと期待されない、なにかに秀でていなくともよい。それらは、未熟で磨かれていないものと定義される。彼らは、学んでいる !

 親が、子供とともに生産的ではないようにすることが、親が子供を好きであることを子供に示すことである。歌にあるように、「私は、あなたがあなたであるがゆえ愛している」である。これは、親が子供に与えうる最も大きい贈物である。子供は、親に愛されるために良い成績をあげる必要はないと、深く内面の確信を持てるようになる。昔、それは、「無条件の愛」と呼ばれた。偽りなく人生に成功することは、全ての子供(実際は、全ての人間)が必要とするものである。これは、過剰なスケジュール、ハイパー・ペアレンティングを止めることによって達成しうるものである。


 アルビン・ローゼンフェルド医学博士は、ニューヨーク市で開業している子供と思春期の青少年専門の精神科医。ニコール・ワイズは、健康とファミリー問題を専門にするジャーナリストである。共著に、“The Over-Scheduled Child" Avoiding the Hyper-Parenting Trap (Griffin・St. Martins, 2001)”がある。




The Brown University Child and Adolescent Behavior Letter, April 2001
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Source: The Brown University Child and Adolescent Behavior Letter
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