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Vol. 17, No. 6, June 2001
1. いじめはごく普通にあり、心理社会的な調整が劣っていることに関連している

いじめはごく普通にあり、心理社会的な調整が劣っていることに関連している

 いじめの実態を調査するために、米国で最初の全国的な研究がおこなわれた。トンジャ・R・ナンセル博士(国立児童健康・人間発達研究所)による研究によって、米国の学童のうちの約3分の1がいじめの対象、または、いじめる側にあるということがわかった。

 この研究によると、いじめは重大な問題で、正常な若者の行動として扱われるべきでないことを示している。いじめに関わっている学生は、他の若者より心理社会的調整能力が劣っていた。同じく、いじめる側といじめられる側双方にある学生は、長期的に負の結果をもたらされる危険性があると指摘している。

 ナンセルによれば、最も重要な研究結果は、いじめが広範囲にわたるということと、特定のグループに制限されないということである。「いじめは、田舎・都市・郊外・街・すべての地域・及び人種に渡って同様に観察された。男子においてより一般であったが、女子の間でもみられる。」とナンセルは当ニュースレターに語っている。

 さらに、「いじめ・いじめられることと、社会的・感情的・行動問題との関係から、いじめは、成長期の正常な一部とかたづけるものではなく、真剣に検討する必要のある問題であるということが、わかった。」とナンセルは結論づけている。

 この研究は、この深刻な問題を提起した最初のものであるという意味で、非常に重要である。「この研究の前に、米国にいじめに関して全国的データがなかったことに注目した。」とナンセルは書いている。

調査結果

 世界保健機構は、公立・私立・宗教学校に通う6年生から10年生までの学童(1万5千人をサンプル抽出)を対象に、いじめに関する質問を含む健康行動調査を行った。

 学生に、どのくらいの頻度で学校でいじめを行い、その時期に何日学校を欠席したか、またどのくらいの頻度で学校でいじめられ、その時期に何日学校を欠席したかを、自己申告方式アンケートで尋ねた。選択肢は、「一度もない」、「一度か二度」、「ときどき」、「週一回ほど」、「週に何度も」であった(低い応答率のために「週一回ほど」は「週に何度も」といっしょに集計し、「頻繁に」とされた)。学生は、いじめの特定の種類や頻度について追加の質問をされた――宗教・人種をばかにする、外見・話し方をばかにする、たたく・びんた・押し出す、噂やうその対象にする、性的コメント・身振りの対象にする。

 これらの質問の前に、以下のいじめについての説明がある。

これからいじめに関する質問をします。他の学生や一群の学生が、ある学生に不快または不愉快なことをするとき、いじめがあったと言います。彼や彼女が望まない方法で繰り返してからかわれるとき、それは同じくいじめと言います。しかし、ほぼ同じ力の2人の学生が口論したり喧嘩しているときは。いじめとは呼びません。

いじめと心理社会的調整

 全体のうち、29.9パーセントの回答者が、時々あるいは頻繁にいじめに関与していた。13パーセントがいじめる側、10.6パーセントがいじめられる側、6.3パーセントがいじめる側といじめられる側双方にあった。

 この研究は、いじめが女子より男子の間で著しく頻繁に発生することを示した。同じく、男子は、肉体的にいじめる頻度が高く、女子の場合は、うわさや性的コメント・身ぶりによるいじめが多く報告された。9―10年生より6−8年生の間でより頻繁に発生した。

 研究者は、3つのグループ(いじめる者、いじめられる弱い者、その双方)に属する学生は、いじめに関わっていない学生よりも、より心理社会的調整能力が低いということを発見した。例えば、友人をつくる能力は、いじめることと正の相関があり、いじめられることと負の相関があった。同じく、他の学生とうまくいかなかったり、孤独が増しているような場合、いじめられることや、いじめたりいじめられたりすることと関連があった。

 「社会的に分離され、友人をつくることが苦手なこどもはいじめの対象になりやすい。」とナンセルは言っている。「一方、他の子どもたちは、彼ら自身がいじめられないように、いじめられている子供を回避するかもしれない。」

 同じく、喫煙や学業が劣ることが、いじめることや、いじめたりいじめられたりすることと関連しているということが分かった。けんかは、全ての3つのグループと関連していた。アルコールは、いじめと関連しており、いじめられることと負の相関があった。一方、アルコールに対する自由放任の親の態度は、いじめることといじめられることが同時に起こるケースと関連していた。

いじめることといじめられることが同時に起こるケース

 いじめる者といじめられる者が、劣った心理社会的調整能力を示すのに対し、いじめることといじめられることが同時にある学生は、より大きな問題を抱える。友達付き合い、他の学生との関係、孤独などである。

 いじめといじめられること双方を報告した学生は、アルコールや喫煙など問題行動との関与と同様に、社会的、感情的な次元における劣った心理社会的調整能力を示した。

 「社会からの孤独、学校での不成功、問題行動などが組み合わさった場合を考えると、いじめといじめられること双方を報告した学生は、ハイリスクグループに相当するかもしれない。」と著者たちは示唆している。

 「不幸にも、我々は、あまりこのグループについて知らない」と、ナンセルは言っている。

 「我々は、必要とする助けを提供するために、彼らについてもっと学ぶ必要がある。」

(参考)
Nasel TR, Overpeck M, Pilla RS, et al.: Bullying behaviors among US youth: prevalence and association with psychosocial adjustment. The Journal of the American Medical Association 2001; 285:2094-2100.

Spivak H, Prothrow-Smith D: The need to address bullying -- an important component of violence prevention. The Journal of the American Medical Association 2001; 285:2131-2132.




The Brown University Child and Adolescent Behavior Letter, June 2001
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Source: The Brown University Child and Adolescent Behavior Letter
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