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Vol. 17, No. 7, July 2001
1. 解説
子どもとコンピューター あなたもはまっていますか


解説
子どもとコンピューター あなたもはまっていますか


医師 グレゴリー・K・フリッツ. 編集部

 20年もたたないうちに、コンピューターは私たちの生活に欠かすことのできないものとなった。インターネットはわれわれのコミュニケーションや、買い物、創作活動や、仕事の仕方を変えてしまった。我々の社会で、子どもたちほどコンピューター技術の進歩によって大きい影響を受けたものはない。新しいものに対する関心、適応性、偏見の無さによって、子どもたちは立派な大人も恥じ入れさせるように簡単にコンピューターをマスターしている。

 子どもたちのコンピューターの世界に対する熱意、能力、のめりこみを見て、この新しいメディアが心の発達にあたえる影響についての疑問が生じた。デイビッド・アンド・ルシル・パッカード財団が最近発行した「子どもとコンピューター技術Children and Computer Technology」は、この急成長を遂げている分野に有用な光を投げる一連の論文を含んでいる。

 コンピューター革命の奥の深さと我々の社会を変えた速度はユニークなものに見えるが、歴史を振り返ると20世紀におこったマスメディアの他の技術革新と関連する同じような影響が見られる。1900年代初頭の「映画」の導入、1920年代のラジオ放送、1950年代のテレビは、恐れと興奮をもって迎えられた。

 どの場合でも、新しい技術が道徳心を破壊する、幼い子どもたちが暴力や性衝動にさらされる、読書やその他の現実生活体験の場を奪うという反対意見があった。一方、新しいメディアが視野を広げ、社会化を促し、学習を助ける能力を強調する賛成意見があった。コンピューターのもつ双方向であるという性質は、コンピューターが子どもの発達に与える影響について、親や専門家の希望と心配の両方を強めている。

 心配の一部は、裕福な家庭の子どもとそうでない家の子どもの間でコンピューターのアクセスが違うという事実から生じている。7万5千ドル以上の所得のある家庭の子どもの90%以上がパソコンにアクセスできるのに対し、2万ドル以下の所得層の子どもたちでパソコンを使えるのは25%以下にしかすぎない。コンピューターに関わることによって大きな恩恵をこうむっている子どもたちと、コンピューターに触ることもない子どもたちを描写するのに"デジタル・ディバイド"なる語が用いられるようになった。コンピューターを使えることがオンライン社会での成功の基本条件となると、低所得層の子どもたちはますます取り残される。

 同時にコンピューター技術は、米国で特殊な学習・心理障害を持つ300万人の子どもたちと重い障害を持つ200万人の子どもたちの教育を促進する上で重要な役割を果たすことができる。例えば低度の学習障害児では、ワープロや言語予測ソフトによって書く能力を有意に高め、普通学級での学習が可能となった。集合的に補助代替装置(AAC装置)と呼ばれる技術の進歩により、話す能力が限られていたり、欠けている子どもの生活が大きく変った。聴覚や視覚障害の生徒や、重い身体障害のある生徒は新しいコンピューター技術のおかげでこれまで考えられなかった機会を得ている。これらの子どもたちにとっては - 巨額の支援装置を賄うことができれば - コンピューターは偉大な平衡装置となりうるのだ。

 コンピューターに費やす時間が増えた結果、子どもの身体的、認知的、社会的発達にどのような影響が現れるかについてはまだよくわかっていない。テレビやコンピューターの前で過ごす時間が増えたので、子どもがじっと座っている時間が増えているというデータがある。その結果児童の肥満が増えはじめている。認知学的見地からは、コンピューターゲームで遊ぶことにより、コンピューターが使いこなせるようになり、パソコンの使用と学業成績が多少よくなることに関連性があるという研究結果がある。社会的発達は、子どもたちがコンピューターでプロジェクトを一緒にやることによって促進され、同時に暴力的なコンピューターゲームによって攻撃性が高まり、他人の苦しみに鈍感になるという証拠もある。

 明らかにコンピューターと子どもは共に成長を続けている。大人がコンピューターの長所短所をよく理解し、機会を均等化し、子どもたちが新しい技術から得る利益を最大限にしなければならない。




The Brown University Child and Adolescent Behavior Letter, July 2001
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Source: The Brown University Child and Adolescent Behavior Letter
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