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Vol. 17, No. 12, December 2001
1. トラウマを経験した子どもを助ける

トラウマを経験した子どもを助ける

 暴力や災害などの外傷性ショックを経験した子どもや若者を助けるためには早期に介入することが重要である。親、教師、精神衛生専門家らが、彼らの回復を助けるためにできることが沢山ある。トラウマが生じるようなことが起こったらその場で、すぐ助けることを始めなければならない。

災害救援者の対応

 退役軍人省の国立外傷後ストレス障害センター(National Center for Post-traumatic Stress Disorder)は、災害現場の救援者たちには以下のようなことを行うべきである。
* 子どもたちが、害をそれ以上受けず、それ以上の外傷性ショックを引き起こすような刺激にさらされないように保護する。可能なら、彼らに安全な隠れ家を提供する。子どもを野次馬やマスコミ取材から守る。
* 子どもが歩くことができるならば、彼らを暴力や破壊の現場、重傷者、さらに続く危険から遠ざける。優しく、かつ断固とした指示が必要。
* ひどい苦痛や困難を感じている子どもを見つけ、ひとまず落ち着くまで一緒にいること。ひどい苦痛や困難とは、パニック状態(震えたり、動揺したり、脈絡のない話し方だったり、口がきけなかったり、不安定な行動を伴う)、深い悲しみ(大声で泣く、激怒する、動けなくなるなどの徴候)などである。
* 子どもを安心させるよう、言葉で、あるいは態度で(場合によっては抱きしめる)同情や支援をしめす。ほんの僅かでも、あるいは一時的でも、そのような元気づけは子どもにとって重要である。

家族の対応

 暴力や災害の後では、家族が彼/彼女を助けることのできる最も重要な存在である。親やその他の大人ができることはつぎの通りである。
* 可能なかぎり、暴力や災害について説明する。
* 子どもたちに感情を表に出すよう勧め、判断を下すことなく聞いてやる。幼い子どもには、感情を表現できる言葉が使えるよう助けてやる。しかし、ショックを受けた事件について話すことを強要してはならない。
* 子どもや若者に、なにか悪いことが起こったあとでは気が転倒するのは当然だと知らせる。
* 子どもたちに感情を体験し、感じたことを話す時間を与える。しかし家庭では、徐々に日常に戻ることが子どもたちを安心させる。
* もし子どもたちが怖がっているようなら、愛しているし、守ってあげると、安心させる。家族として、できるだけ一緒にいるようにすること。
* 就寝時の行動が問題なら、子どもに余分の時間をあたえ、安心させる。必要なら、あかりを消さないでおいたまま寝かせたり、一緒の部屋で寝させるようにする。
* ショッキングな事件は子どもや若者のせいで起こったのではないのだと、言ってきかせる。
* 退行的行動を批判したり、子どもに"赤ん坊みたい"などという言葉を浴びせたりして恥をかかせない。
* 子どもが泣きたかったり、悲しがったりするときは、そうさせる。勇敢だとか、強くなることを期待しない。
* 自制心を持つよう勧める。食べるものや着るものについて自分で決めさせる。
* 子どもの面倒が見られるように、まず自分の体を大事にする。

学校の反応

 暴力や災害が学校や地域社会全体にふりかかったときは、教師も学校の管理者も癒しの過程で大きな役割を果たすことができる。教育者のできることには次のようなことがある。
* 可能なら、子どもたちを安心させようとする前に、自分自身が出来事に対処できるように時間をかける。学校で暴力事件が起こったときなどは可能ではないかも知れないが、自然の災害などの時には、学校を再開するまで数日間余裕があると思われる。
* 通常の学校生活へ急いで戻ろうとしてはならない。子どもや若者に外傷性ショックを受けた事件について話し合う時間を持たせる。
* ショックを与えた事件についてのクラスでの話し合いに参加したがらない子どもの意思を尊重する。話し合いを強要したり、トラウマを引き起こした出来事について何度も言及したりしない。そうすることで、子どもが再び傷を負うことがある。
* 全学級で、小グループで、または個々人で話し合いを持つ。これらのセッションは、生徒たちが自分が感じている恐怖や心配は正常だと知らせるのに役立つ。多くの郡や学校教区では、災害や暴力事件の後でこのようなセッションを持つため学校へ出向くチームを置いている。
* 幼い子どもにはアートやプレイ・セラピーを提供する。
* 子どもの間の文化的差異に気をつける。たとえば、否定的な感情を表すことを許さない文化があるだろう。また先生とアイコンタクトを避ける子どもは鬱状態にあるのではなくて、自分の文化に相応しい行動を示しているにすぎないだけのことがある。
* 子どもたちに、問題を適切に処理、解決するスキルと。年相応のやり方で不安な気持ちとうまくやっていく方法を身につけるようはげます。
* * 親たちのための会合を開いて、外傷性ショックにつながった事件、子どもたちの反応、親や教師がどうしたら助けられるかを話しあう。可能なら、これらの会合に精神衛生の専門家に参加してもらう。

 ほとんどの子どもと若者たちは、上述したようなサポートが与えられたら、外傷性ショックを受けた経験から生じた恐怖や不安から、数週間でほぼ完全に回復する。しかし、中には癒されるにはもっと時間をかけてサポートを必要とする者もいる。愛する者、先生、友だち、ペットを失った悲しみから立ち直るには何ヶ月もかかることもあり、マスコミの報道や命日などにより思い出して再び悲しみに沈むこともある。
 トラウマの原因となった事件の直後、またその後数週間は、深い悲しみや何か別の強い感情のために、さらに強力なサポートと治療を必要とする若者を特定することが大切である。精神衛生専門家の助けを必要とする子どもや若者たちの中には、事件の起こった場所を思い起こさせる場所へ行くのをいやがったり、拒否する回避行動を示す者や、物事に対する情動反応が少なくなり、感情が欠如するなどの感情麻痺を示す者がいる。もっと通常の反応、つまりトラウマを再体験したり夢でうなされたり昼間に思い出して不安になったり、驚きやすくなったりするなどの状態を示す若者は、親や教師から元気づけられるとよく反応する。

出典:国立精神衛生研究所出版物第013518号より抄出。



The Brown University Child and Adolescent Behavior Letter, December 2001
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Source: The Brown University Child and Adolescent Behavior Letter
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