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Vol. 18, No. 6, June 2002
1. 小児喘息とマイノリティーの子どもたち
2. 双極性障害を取り扱うHP, listserv権

小児喘息とマイノリティーの子どもたち

医学博士グレゴリー・K・フリッツ


 喘息は子どもにもっとも良く見られる慢性病で、罹患率も死亡率もかなり高いとされている。喘息の病理についての理解が深まり治療法もかなり進んでいるにもかかわらず、統計によれば過去30年間で罹患率、死亡率はともに増加している。合衆国では500万人近い子どもが喘息と診断されており、喘息は若者の入院、救急外来での診療、学校の欠席、活動制限の主たる原因である。全国で喘息と自己申告のあった例は1982年から1994年までの間に61%増加した。

 患児数の増え方が早いため、専門家の養成がこれに追いつけず、ケアを受けられない喘息の子どもが増えている。喘息の子どもの約10%が1年に少なくとも1回入院しており、2 - 6%が毎年30日以上学校を休んでいる。喘息のための医療費支出は年間120億ドルを超えると推定され、入院費用は年間400万ドルを超える。喘息の薬理学・免疫学的管理が大幅に進歩しているにもかかわらず、喘息はいまだに大きな健康上の問題である。

 気になるのは、社会的・経済的に恵まれない人たちやマイノリティー(少数民族集団)の人たちの罹患が急増していることで、子どもたちの場合には特にリスクが高い。いくつかの疫学研究によれば、アフリカ系とラテン系の子どもたちの喘息はアングロ系の子どもたちと比べて30%から100%高いという記録がある。アフリカ系アメリカ人の喘息による入院数は3倍、死亡は4倍にのぼる。本土に住むプエルトリコ人の子どもの喘息で親が報告したものは11 - 18%で、プエルトリコ島に住む子どもたちの喘息の場合は30 - 33%である。マイノリティー間の格差とプエルトリコ人の子どもの間で見られる異常な高率の原因はわからないが、いくつかの可能性が考えられる。

 これらの要因のいくつかは生物学的又は分子学的レベルで働くもので、喘息にかかりやすい遺伝子を持つ個人や幼児期の免疫機構感作などを含む。他の要因には家族がうまく病気に対処しているか、子どもが処方薬をうまく服用しているかなどの個人または家族レベルに関するものもある。特定の精神疾患(うつ病、ADHD、分離不安、パニック障害)などが喘息と共存すると、病気を悪化させることがある。喘息の性質について家族がどう考えているか、適切な医療とは何か、医療制度をいかに利用するかなども、このレベルでは重要な要因である。移民にとっては、家族の文化適応の度合が喘息の罹患率に重要な意味を持つ。

 社会的/環境的レベルでの影響は、近隣社会または地域社会全体に影響を与える生態学的因子である。喘息の子どもにとって、これらは病気の経過を決める重要な因子となる。訪問医療サービスの重要な面として、ケアを受けられること(とくに保険に加入していない貧困層の子ども、農村地域の子どもたちにとって困難)、サービス提供者の特性(コミュニケーション能力、共同で行なう意思決定、偏見)、継続したケア、治療のやり方などが挙げられる。ホコリダニやゴキブリの高いレベルのアレルゲン、煙草の煙、その他の汚染物質がマイノリティの子どもたちの家庭環境には多くみられる。さらに近隣地域に起こる暴力と貧困からくる慢性的なストレスが免疫機能を損なうことがあるという仮説もある。

 一部のラテン系の子どもたちにとっては、ヘルスケア制度は特に重要になっている。潜在的な言葉の壁のせいで、例えば英語能力が限られているラテン系の喘息の子どもたちは英語を流暢に話せる同じような子どもと比べて、急性期に挿管を受ける危険度が高い。親と医師とのコミュニケーションのレベルは、患者の満足度、医師の指示を守ること、全般的に健康に与える結果と強い相関関係がある。コミュニケーションに問題があると(言語の問題、偏見、忙しい診療所での時間不足、不信感などの別を問わず)、家族が喘息についてよく理解し、治療計画について医師と共通の理解をもつ可能性は少なくなる。極端な場合は、マイノリティーの喘息の子どもは、救急医療室でしか治療を受けられなくなり、そのような治療は継続性が低く、コストが高く、本来重要である長期予防薬を処方される割合が低くなってしまう。

 合衆国の人口変化を考えると、マイノリティーの子ども、特にヒスパニック系の子どもの喘息罹患率は有意に増加すると考えられる。2000年度国勢調査によれば、米国のラテン系人口は58%増加し、これは他のエスニック・グループのいずれよりも多い。ラテン系は今では人口の12.5%を占め、非常に貧しく、教育程度も低く、健康保険に加入していないことが多い(35%)という。国家として、マイノリティーの人々の喘息の主たる原因を明らかにし、この最も重要な公衆衛生問題の被害者である子どもたちを助ける有効な方法を開発することが、我々の義務なのではないか。



双極性障害を取り扱うHP, listserv

 Juvenile Bipolar Research Foundation−JBRF(若者の双極性障害研究財団)は、双極性障害−躁うつ病−の子どもや若者の治療にあたる医師のためにオンライン上では初めての専門家のためのリストサーブを開設する。リストサーブは、医師がオンライン上で、思春期に始まる双極性障害とこれと同時におこる疾患の治療についての臨床経験を語りあい、情報を交換する機会を提供しようというものである。専門家の集うリストサーブには、財団のウェブサイトwww.bpchildresearch.orgを通じて参加することができ、2002年6月1日に開設される予定。詳しくは、Sandi@JBRF.org Sandi Norelliまで。



The Brown University Child and Adolescent Behavior Letter, June 2002
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Source: The Brown University Child and Adolescent Behavior Letter
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