大人と一緒に収監される青少年: 深刻化する問題 |
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医学博士グレゴリー・K・フリッツ 文明社会の特徴のひとつは、犯罪とその懲罰に関しては青少年と成人は違うという認識である。ちょうど100年前にイリノイ州で合衆国最初の少年裁判制度が始まり、それ以来すべての州において司法制度上、成人と未成年者は公式に区別されてきた。 若年犯罪者を成人から物理的に隔離する以外に、少年院や鑑別所は年齢にふさわしい更正プログラムを提供しようとしている。非行少年は、成人犯罪者と比べて一生犯罪を重ねつづける可能性はすくなく、行動を矯正しやすく、全般的に"救済可能"である。したがって集中的な教育的・心理的・職業的支援を与えるに相応しいと考えられている。 1980年代初頭、若者の凶悪犯罪が劇的に増加しはじめ、多くの地域社会の態度が変った。その後青少年犯罪発生率は横這いになり、最近は実際に減少したものの、歴史的に見て高い水準である事に変わりはない。人々は、暴力的なティーンエージャーに安全を脅かされていると感じると、少年裁判制度は効果があるのかと問いかけ始める。「犯罪を犯せる年齢なら、服役できる年齢だろう」というのは、単純だが論理に訴えるものがある。この考えがどの程度受け入れられるかは、検挙率の上昇、刑期の長期化、更正させようとする努力の減少、成人施設へ収監される青少年の増加などに反映されている。 最近司法援助局の「成人刑務所に収監中の未成年者全国調査Juveniles in Adult Prisons and Jails: A National Assessment」という題名の出版物がこの問題を取り上げた。 なるほどと思わせる事実も多い。1998年の統計によると、過去15年間に成人刑務所の成人受刑者は163%増加、これに対し未成年者は366%増加したという。州立刑務所に収監された若者の数は2倍以上となった。成人用施設の未成年収容者の絶対数は少なくない―未成年受刑者の14%にあたる1万4千人に及ぶ。そのうち97%が16歳か17歳である(3%は16歳未満)。 州立成人用矯正施設のほぼすべてで若年犯罪者が収容されており、彼らは成人用に設けられた中程度又は最も警備の厳しい施設に主として収容されている。若年犯罪者用のユニットや設備が備え付けられているのは施設のわずか13%にすぎない。成人用施設に収容されている未成年者のなかでもマイノリティー出身者の割合が非常に多く、これはマイノリティー出身が多い成人受刑者と比べても明らかに多い。 この傾向が我々にとって重要なのは何故だろう。すぐに頭にうかぶのは、成人用施設に収容された若者が暴力に曝されやすいということだ。47%が暴力行為の犠牲となる。少年施設に収容される者と比べて、性的暴力の犠牲となる可能性は5倍以上、職員に暴力をふるわれる可能性は2倍、武器で襲われる可能性は50%以上高くなる。受刑者といえども、未成年者は法律で義務付けられ判例法で保障された教育、更正プログラム、保健、その他のサービスを受ける特別の権利を有している。 成人用施設がこれらの要件を満たしていることは少なく―これは少年鑑別所に収容された若者とくらべて成人用刑務所に収監された若者の自殺率が8倍にもなる一因ともなっている。矯正という見地からは、成人と若者を一緒に収容するのは制度的にかなりの無理がある。彼らの行動は互いに異なり、成人受刑者に有効なやり方で若者を扱ってもうまくいかない。刑務官は思春期の難しい問題について知識を得たり、自信をもてる訓練をうけていないのが常である。 ひとつの解決策は、最近の傾向を転換して、成人犯罪として裁かれる十代の若者の数を減らすことだろう。社会に受け入れてもらうためには、少年裁判所・家庭裁判所制度が暴力犯に断固として対処し、成人制度と少なくとも同じ位(かなり低い閾値ではあるが)の有効性を示さねばならない。 成人刑務所や監獄への未成年者収監を続けるなら、刑務官の思春期受刑者を監督、保護する知識を高め、年齢に応じた若者向け更正プログラムを開発し、時間をかけて結果をモニターしなければならない。非行青少年たちに対し適切な対応をとれるか否かは、我々の社会全体にかかっている。 |