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8月
8月

〜わが子に願いを持たないなんて!(3/5)〜

<今月の本>ミヒャエル・エンデ作 『オフェリアと影の一座』



◆子どもの心の光と影を知る◆

 そんな折り、以前から敬愛する作曲家のM先生と、ある講演会に同行することになり、帰りの列車のなかで、相談してみました。子どものためのすばらしいピアノ曲集をだされてもいるM先生にも、私の息子とそう年齢の違わぬ息子さんがいらして、あれこれ、話して下さったのですが、最後に、
 「ぼくは、自分の子どもには願いをもたないようにしています」
 と、おっしゃったのです。

 正直いって、私は戸惑いました。(子どもに願いを持たない親なんているのかしら?)とも思いました。そのM先生のことばの意味が、私にはよく掴めなかったのです。
 結局、息子はそれから一年半ほどして、元のように、おしゃべりな息子にもどり、父親とも、いっしょにビデオを買いにいき、セッティングしたりするようになりましたが、いったい何がおきたのか、いまだに、よくはわかりません。

 大学生になったころには、たまに父をそそのかして、いっしょにドライブしたり、スキーにいったり、していました。そして、たしかに、父を利用しているふうを見せながら、実はいたわっているそぶりが感じられました。父と息子はまた親しくなりましたが、以前とは何かが変わったと思います。
 私は、息子の心にも我々同様、光と影があること、あって当たり前なことを改めて知らされました。

 M先生のことばは、その後もずっと気になって、私は時折、考えていました。
 恐らく、親の子に対する過剰な期待や価値観の押しつけを、自らもいましめたことばだったのではないかと思います。あるいは、その無意味さを知っての呟きだったのでしょうか。もとより、私どもはそんな期待などもってはいないつもりでしたが。
 でも、「親から何も言われないからこそ、ものすごいプレッシャーを感じていた」と、後日、言われたことも事実でした。


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