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10月
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〜白いハティと黒いハティ(3/6)〜

<今月の本>ルース・エインズワース作 『黒ねこのおきゃくさま』



◆突然現れた黒いハティ◆

 そんなある日、私が仕事から帰るのをまって、夫が、
 「グレースに会いにいきたい。すぐ、電話をしてくれ」というのです。
 グレースとは、かの美しきグレース・ケリーからとった、友人Tさんの黒いラプラドールの女の子の名前です。

 じつは、このTさんは、わが家にとっては「ドリトルおばさん」なのです。わが家に最初にきたハムスターも彼女の手を経てのものでしたし、公園の池の辺に捨てられていた黒い子猫を拾ってきた息子が、小さな哺乳瓶で育て方を教えてもらったのも彼女。何かのときには、亡きアンを預かってくれたのも彼女の家族でした(アンは何年たっても、彼女がわが家に来ると大喜びでした)。

 結局、グレースに会いに行った数日後に、私たちは、もう一度、犬を飼う決心をしていました。
 「ペットロス症候群を癒すには、もう一度ペットを飼うことですって」
 ドリトルおばさんのことばは、やけに説得力があったのです。
 あと15年たてば、私たち夫婦も70歳です。飼うなら早いほうがいいでしょう。
 「まだ、アンの49日も過ぎないのに!」と電話で抗議する娘に向かっては、
 「いや、アンがいい犬だったからこそ、また犬を飼いたいと思うんだ!」と夫の弁。

 アンのかかりつけだった獣医の先生に相談したところ、「ねっからの犬好きという若者を紹介しましょう」ということになりました。
 そして、それから、1週間もしないうち、その若者がわが家の玄関に立ったのです。
 真っ黒い、小さな子犬を抱いていました。
 たまたま、グレースと同じ種類の子犬だったのも、何かのご縁でしょうか。

 私たちは、その女の子に、再びハリエット・メルバン、つまりハティと名付けました。
 それ以外、どうにも思い浮かばなかったのです。
 こうして、結婚して最初の犬が〔白いハティ〕、そして結婚30年、おそらく、わが人生最後の犬が〔黒いハティ〕となったわけです。


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