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12月
12月

〜子どもの願いと悲しみと(5/6)〜

<今月の本>エッツ&ラバスティダ作 『クリスマスまであと九日』



 さて、物語にもどりますが、セシはそのポサダの日までの9日間、どんなふうに過ごすのでしょうか。まず、おかあさんとピニャタを買いにいくのを心待ちにしています。その時まで、お手伝いさんのようすや、家の前を通る物売りの人たちの姿も丹念に、セシの目を通して描かれています。ある日、公園にいったセシは大好きな池のあひるにクッキーをやりながら、ポサダのことを話します。

 「それから、あたしのピニャタも、つるしてもらえるかも しれないの」

 そして次の日、セシは、あひるになりたい、と思います。水の上に浮かんでいるのはどんな気持ちかしらと想像します。セシは浴槽に水を入れて、裸で入ってみます。
 あまりの冷たさに驚き、震えながらも、セシはあひるの鳴き声を真似てみますが、寒さに泣きだしてしまいます。驚いたおかあさんがとんできます。
 公園のあひるたちの現実(?)を知ったセシは、悲しくてなりません。あのあひるたちは、どんなに寒いことかと。

 これが前半の山場です。子どもの心の中には、おとなが想像もつかないドラマがあり、それゆえにまた、悲しみも生まれることを知らされます。それは、身の危険をともなうものでもあること、おとなは目に見える事件だけに心を奪われ、子どもの心の中で起きていることには気づかないことが多いことをさりげなく示しています。
 おそらく、そのような事件は子どもたちの現実では、日常茶飯事なのかもしれません。

 いよいよ、おかあさんが、昔からのメキシコのマーケットにセシをつれて、ピニャタを買いにいく日がきます。大喜びで出かけたセシに、色とりどりのピニャタが下げられた姿でクルクル回りながら、話しかけてきます。みんな自分をセシに選んでもらいたいのです。なぜなら、「小さな女の子の はじめてのポサダに えらばれたピニャタには、とっても すばらしことが よく おこるからです。」


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