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アヌラ・グーナセケラ博士

マルチメディア時代の子どもたちの声:
アジア9カ国での子どものテレビに関する経験的研究



 本論文は中国、インド、インドネシア、日本、マレイシア、ネパール、フィリッピン、シンガポール、ベトナムのアジア9カ国でのテレビ子ども番組についての経験的データを述べる。1996年にシンガポールの『アジアメディア情報コミュニケーションセンター(AMIC)』が行った研究で得たデータに関するものである。

 比較のためにテレビ子ども番組を『アニメまたはマンガ』、『人形劇』、『お話』、『連続ドラマ』、『プレスクール・マガジン』、『マガジン情報』、『情報/ニュース』、『マガジン・エンターテインメント』、『クイズ/ゲーム』、『音楽』、『宗教』、『文化/伝統』の12種類に分類した。この分類に入らない番組は『その他』とした。

 本研究で得られた重要な結果いくつかについて述べる。

  • 子どものテレビではアニメ番組が圧倒的に多い。多くのアジア諸国で子ども番組のうちアニメが突出して多い

  • 子どものテレビでは外国製番組が目立って多い。これは最近アジアで多国籍衛星テレビ放送の普及に伴ってさらに顕著になった

  • アジア諸国で制作されるテレビ子ども番組は、番組が対象とする子どもたちにアピールしない。その結果子どもは成人向番組を見たがる

  • 8、9歳や10代前半の子ども向け番組が非常に少ない。番組の中には6歳から12歳までなどという幅広い年齢の子ども向けのものがある。このような年齢層では子どもの知的能力はかなり違っている。したがってこのような番組はどの子どもにもアピールしないことになる

  • 本調査で面接した子ども番組プロデューサーで、国連子どもの権利条約を知っていたものはほんのわずかであった。中国、日本、ベトナムのプロデューサーのこれらの権利についての知識がもっとも多かった。これらの国で制作されるテレビ番組はこのような権利についての情報を番組に盛り込んでいた

  • これらの調査国の中でも、中国、ベトナム、日本は子ども向けテレビ番組の発達に役だつような政策をフォローしていた。中国とベトナムでは、政府による支援体制は厳しいものであった。また、日本では、NHKの公共放送に対する認識が子どものテレビ番組の成功につながっていた

  • しかしアジアの他の国では、テレビ子ども番組は市場で競争を強いられており、生き残っていけない

  • 本研究はアジアの多くの国でテレビ子どもを開発し、推進する必要があることを明確に示した。さらに市場の力だけではこれが可能でないことも示した。広告主や販売主は子ども用テレビ番組には利益は殆どないと見ている

  • 1996年にマニラで開催された『子どもの権利とメディアに関するアジアサミット』で,AMICはアジア子どもコミニュケーション基金(ACCF)の設立を呼びかけた。ACCFの目標はテレビ、ラジオ、プレスなどで質の高い子ども番組の制作、販売を行うことである。政府、ビジネス、民間団体の支援を必要とする基金である。
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