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ヒレル・ワイントラウプ氏(Mr. Hillel Weintraub)

同志社国際中・高等学校(京都)

コミュニケーション・センター長



新しい学びのスペースを設計し、作り、利用すること:
考えるための場としてのスペース


同志社国際中・高等学校のコミュニケーションセンターについて、ビデオなどでイメージを示し、センターが作られたプロセスについてお話ししたい。それによって、このプロセスが我々に学習について、また教師と生徒の役割について考える機会を与え続けてくれていることをご説明したい。

センターの発展を三つの段階に分けてみた。それぞれの段階において、我々の設計の進め方のせいもあって、この新しいスペースを考えることがコミュニティとコミュニケーションについての自分の考えを探る方法となった。論文を書いたり、このように発表をしたりすることだけが自分の考えを表現する機会ではないように、新しい学びのスペースについての自分の考えを書いたり話したり、またそのスペース作りに携わったりすることは、何かをつくりあげる機会以上のものとなるのである。すなわち、設計のプロセスや学習のプロセスを模索するチャンスなのである。

第一の段階では設計についてみてみたい。建設委員会が最終設計図を作ったのだが、スペース取りに関して柔軟性をもたせてくれたので、我々は引き続きアイディアを展開していくことができたのである。私がもっとも興味を引かれたのは、設計段階で我々の夢や教育目標を自由に考えさせてくれるように考慮されていた点である。これが全員に共同作業や相互作用ということの重要性を示すモデルとして役立ったと考える。学校での日常的な活動の大部分がトップダウンであるので、この委員会での経験は、我々が生徒たちと一緒に活動していく上で何をしていけるのかというビジョンを与えてくれた。

センターの実際の建築段階については建設の専門家が担当したが、設計段階の共同作業があまりにもうまくいったので、ここでも大きな問題はないであろうと考えた。しかし、いくつかのアイディアについてはコミュニケーションがうまくいかないこともあった。私が一番気に入っているエピソードは、我々の教育哲学や本当にしたいことは何であるのかという点を300時間も話し合ってきたのだが、コミュニケーションセンターの開所式の場で、主任建築家のひとりがセンターに目を見張り、「今になってやっと皆さんが何をしようとしていたのかが判りました!」と言ったことである。

建築段階中に、我々の委員会では家具やカーペット、色などを選ぶのに忙しかった。コンピュータ・ネットワークのための技術計画も立て、すべての備品を選んだ。設計段階と建築段階が同時進行した部分である。しかし、何かを決定するたびに、この決定は教育とどんな関係があるのか、という点を考えなければならなかった。机の材質、カーペットの色、隠すペースの用途等についていろいろな選択をするたびに、我々の教育思想が形となっていったのである。しかし、夢を見ている間はよかったが、夢が間もなく現実になっていくのを実感していくにつれて少し心配になってきた。枠組み工事が進み、コンクリート打設を目の当たりにすると、「一体何をやっているんだろう」という疑問がわき起こってきたのである。そして、それより恐ろしかったのは、「何をし残しているんだろう」と思えてくることであった。

最後に、利用段階についてみてみたい。センターが8月に開所してから起こったこととは何か、生徒たちそして教師たちはこの新しい設備をどのように使っているのか、その使い方は学びについての彼らのアイディアを語るものであるのか、その考え方はどう変化してるのか、さらにスタッフは利用をどのようにサポートしているのか、という点についてである。

段階的に物事がうまく進むことはまずないであろう。我々も、設計や建設のやり直しが恒常的に行われるであろうと思いながら、またこれらのプロセスが施設利用を通じて学習の一部となって行くであろうと期待しながら、このセンターの建設にあたってきた。私たちは、学生・スタッフ両方のユーザーがともに学ぶスペースをどのように作っていくかを考えていける環境を作り上げる努力をしてきた。環境に影響を与える力によって、彼らは教えること、学ぶことにおけるそれぞれの役割についても自信を持って考えることができるようになるであろう。
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