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●【特集】母乳とミルク
(2006年2月17日)

「明治乳業(本社・東京)は、昨年発売した乳児用粉ミルク「母乳サイエンスミルク明治ほほえみ」について、「母乳と同じものという誤解を与えかねない」として商品名から「母乳サイエンスミルク」を削除した。」 Asahi com 2月14日ニュースより

この商品は「成分と機能を母乳に限りなく近づけた」もので、「母乳サイエンスミルク」という名称にここからきています。しかし、母乳による育児を勧める団体や関連学会などから非常に強い批判をうけ、商品名の変更を決断したとのこと。

CRN小林登所長は、母乳に注目をし、著書の中でも繰り返し取り上げています。興味深いものをいくつか取り上げてみましょう。

◆たんぱく質は少なく、糖質は多い◆*1

人間の母乳を調べてみると、たんぱく質は牛乳の3分の1、イヌ乳の8分の1、イルカ乳、ウサギ乳の10分の1で、哺乳類の中でもっとも薄い。しかし、糖質になると逆で、牛乳の1.6倍、イヌ乳の2.3倍、ウサギ乳の3.5倍、イルカ乳の8倍もあります。人間とほかの哺乳類との大きな違いのひとつは、人間は歩きはじめるのに1年近くもかかるということです。ここに、母乳成分の違いの理由があるようです。

◆はじめ薄味・終わりはクリーミー◆*2

母乳の成分はいろいろなことによって変化しますが、1回の授乳の間でも、最初は薄くてしだいに濃くなっていきます。母乳をのませているとき、その最後の数滴を科学的に調べると、脂肪がとくに多いという事実があります。赤ちゃんは母乳から風味の変化を学んでいるのかもしれません。


非常に不思議な人間の母乳。
しかし、母乳が出ないなど全ての赤ちゃんが母乳を飲むことができるわけではありません。母乳に替わるミルクの始まりは練乳で、日本で練乳がつくられたのは明治5年(1872年)でした。乳児の人工栄養が練乳ではじまり、それが50年も続いたのです。しかし、練乳の保存性には限りがあります。一度使ったら、冷蔵庫がないと腐敗したり汚染したりしやすいものなのです。その欠点をなくすために、粉ミルクが開発されたのです。そして、粉ミルクの高い保存性によって、急速に普及することになりました。現在でも、欧米の育児用の牛乳製品の一部は練乳ですが、わが国ではミルクといえば粉ミルクをさします。日本で粉ミルクがつくられはじめたのは、大正6年(1917年)のことでした。*3

その後、様々な研究がなされ、粉ミルクの成分も改良を重ね、赤ちゃんにとって、人工のものとしては、完全に近い栄養といえるものとなりました。しかし、どんなに研究を重ねても、母乳とミルクは異なるのです。母乳って不思議ですね。

*1
小林登文庫/新・こどもは未来である「母乳の成分に人間の文化がある−1」より
*2
小林登文庫/新・こどもは未来である「母乳は赤ちゃんのフルコース−1」より
*3
小林登文庫/新・こどもは未来である「母乳にかわるもの、ミルク−1」より


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