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4月
4月

〜子どもの心が見えていますか?(1/5)〜

<今月の本>フィリッパ・ピアス作 『まよなかのパーティー』



◆ある朝、突然、通園拒否がはじまった◆

 「あたし、あんなとこ、もういかない!」

 きのうまで元気に行っていた幼稚園に、今朝も、意気揚々と出かけていったのに、突然、娘が叫んだのです。玄関に入った娘の目には、うっすらと涙がにじんでいます。

 いったい、何が起きたのでしょう?
 まだ新米の母親だった私はとまどいを隠して、必死で娘のようすを見つめ、それとなく、なぜなのかを聞き出そうとしました。でも、娘は固く口を閉ざして、それ以上話してはくれませんでした。

 翌朝からが、大変でした。とにかく、なんとかなだめすかして玄関を出るのですが、幼稚園バスの停留所までいくと、娘は私のスカートをしっかりつかまえて離しません。大通りの向こうから、黄色い幼稚園バスが見えると、娘の手には力が入ります。バスがバス停に着くころにはピークに達し、両手両腕で娘は私にしがみつきます。私は、娘の指の一本一本を引き剥がし、泣き叫ぶ娘をバスのステップから中へと押し込みます。

◆父親と母親の受け止め方の違い◆

 バスが遠ざかると、半分ほっとするものの、さて、それからの何時間かを、娘はどうやってすごすやら、それを思うと暗い気持ちになります。
 「いいんじゃないの。それだけ、家のほうが幼稚園より楽しいんだろう?結構なことじゃないか、反対だったら、それこそ問題だ。昔は幼稚園なんて行かない子も大勢いたんだからな」
 それはそうなのです。私だって、幼稚園なんか行きませんでしたから。でも、母親というものは、えてして父親ほど子どもに対して楽天的にはなれないようです。(これは娘が思春期を迎えるころになると、なぜか、まったく逆転します)。

 1週間ほど、そんなことを繰り返したでしょうか。そうまでして行かせたのは、今考えると、これが、もし小学校の場合だったら、もっと困るだろう、という思いがどこかにあったかもしれません。子どもを持ったことのない女性の発言が頭に残ってもいました。
 「いまの子どもって、わがままで、ちょっと気に入らないことがあると、すぐ登校拒否したりするんだってね」


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