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4月
4月

〜子どもの心が見えていますか?(2/5)〜

<今月の本>フィリッパ・ピアス作 『まよなかのパーティー』



◆子どもは子どもによって救われる◆

 そのうち、思わぬ展開となりました。
 娘が、元通り、元気に、楽しげに幼稚園に通いだしたのです。ほっとすると同時に、私は不思議に思って、幼稚園の担任の先生に伺ってみました。

 「リョウくんのおかげですよ」
 若い女の先生が、くすっと笑って、教えてくれました。
 年長組のリョウくんが、バスに乗るたびに泣いている娘を見て、
 「ミーちゃん、ここにおいでよ」
 といって、娘を自分の席のとなりに呼んでくれたのだそうです。

 以来、娘はリョウくんのとなりに陣取れば安心で、しだいに、元の明るさをとりもどしていったようです。みんなも、いつも、リョウくんのとなりはミーちゃんと決めて、空けてくれるのだといいます。

◆自己防衛から支え合う仲間の成立へ◆

 それでは、そもそも、いったいなぜ、娘は行かないと言いだしたのでしょうか?
 しばらくたってから、改めて娘にたずねてみました。

 「だって、ゲタばこのとこで、くつをはこうとしてたら、ガクちゃんが、うしろから、いきなりなぐったんだもの。あたしは、なんにもしていないのに――」

 理由もなく、いきなり、それも後ろからなぐるなんて、娘には考えられないことだったのでしょう。いわば、社会という現実に踏み出して、初めての経験でした。

 そんな〔やなやつ〕のいるところへは、いくもんか。というのが、彼女なりの自己防衛手段だったということでしょうか。
 でも、それでは根本的な解決にはならなかったのです。


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