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4月
4月

〜子どもの心が見えていますか?(5/5)〜

<今月の本>フィリッパ・ピアス作 『まよなかのパーティー』



球

「ふたりのジム」

 同じ〔ジム〕という名をもつ、祖父と孫の交流。彼らを支えて生きる未亡人の母親の心のドラマもからめて描いています。
 車椅子のおじいさんの願いをきいて、ジム少年が田舎の墓地に連れて行くというユニークな設定の物語が展開されます。おじいさんは、こっそり巻き尺をもって……。
 それは、日常の中で起こるささやかな事件でありながら、そこに見過ごされがちな、人間の本質が横たわっていることに、読者は改めて気づかされます。

球

「カッコウ鳥が鳴いた」

 隣りの家の幼い女の子ルーシーの世話を押しつけられたパット少年は、しぶしぶながら、近くの川を逆上る小さな旅にでかけます。柵をくぐり、倒れた大木を渡り進んでいくうちに、自分を信頼してついてくるルーシーを見捨てられなくります。
 最後まで面倒をみ続けるパットだが、疲れて乗った帰りのバスの中で、周囲の大人たちの冷たい視線にあう。すると、幼いルーシーがパットをかばって、精一杯の抗議をします。「……いつだって、パットといっしょなら、あぶなくなんかないのよ」
 その純真な叫び声が、いつまでも胸に響きます。


 これらの物語には、とりたてて魔法も冒険もないのですが、生きていることのなかに,いかにすばらしいドラマがひそんでいるかを、思い知らされます。
 どの一篇をとっても、子どもの心の内面が手に取るように鮮やかに描きだされて、同時に、子どもを取り巻くおとなたちの姿も浮かび上がってきます。
 ここでご紹介した他にも「まよなかのパーティー」、「キイチゴつみ」、「アヒルもぐり」の3編のお話が入っています。
 各編は完全に独立していますので、どの物語から読んでもかまいません(読んであげるなら、7、8歳から)。

〔註〕

 現在、この本は残念ながら、絶版となっています。優れた司書のいる図書館には入っていますので、ぜひリクエストして下さい。また、猪熊葉子さんによると、近く、岩波書店の岩波少年文庫に入り、今年6月に出版されることになり、目下、再推敲中とのこと。お楽しみに。


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