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5月
5月

〜心を育むよろこびを分かち合う〔ことば〕〜
(1/4)

<今月の本>
マリー・ホール・エッツ作 『もりのなか』、『ジルベルトとかぜ』、『ペニーさん』




◆お母さん、ひとりで抱えこまないで!◆

 Tさんは、子どもの本のグループのリーダーをしています。ある夜、Tさんと電話で子どもたちや子どもの本について、語り合っていたとき、
 「私、まだ幼い自分の子を、壁に投げつけたことがあるんです――」
 Tさんが、そんなことを言いだしたのです。しばらく沈黙がありました。
 Tさんたちは自分の好きな子どもの本を伝えたいという一心で、小学校のPTAを中心に読書会を開き、子育ての悩みなども語り合い、時には講師を招いて講演会を開いたりしています。

 「ひとりで子育てしているうちに、どんどん追い込まれていって、気がついたら、そんなことしていました。幸い、子どもにケガはなかったものの、いま思いだしても恐ろしくなります」
 私はもちろん驚きました。実は私が会に招かれた時、Tさんは、司会などもとても上手で、心配りのよくきく、グループのまとめ役、相談役として適任者でした。
 いったいTさんは、どうやってその危機を乗り越えたのでしょうか。

◆支えてくれた夫のことばと本◆

 「自分に自分でショックを受けて、ともかく、夫にうちあけました。夫は忙しい毎日を送っていましたが、驚いて、真剣に考えた末に、〔完璧な母親なんていない〕と言ってくれました。あの時、夫に話せなかったら、そして話しても夫が耳を貸さなかったら、どうなっていたか……。でも、あんなことがあったからこそ、いまの私がいる。あんなことがなかったら、子どもの本の会などやってなかったかもしれません」

 私は、ひたすら、Tさんの話を聞いているだけでした。そのような状態から、Tさんとご主人がどんな思いで抜け出したか、想像に余りあることです。
 「夫と話し合い、悩み、いろんな本を読んでいるうちに、松田道雄さんや山田真さんの子育て論を読んで、〔そんなに生真面目にやらなくていいんだよ、力を抜いて――〕というメッセージに出合い、ほっとしたことも覚えています」
 Tさんは、そう付け加えました。

恐らく、夫婦で向き合い、支え合い、悩み抜いた末の出口だったろうと思います。


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