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10月
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〜白いハティと黒いハティ(1/6)〜

<今月の本>ルース・エインズワース作 『黒ねこのおきゃくさま』



◆白いハティの運命◆

 前回の「わが家のアン・テリ物語」の読者から、「犬の話の後日談をぜひ!」という声があったのに気をよくして、もう一度、犬の話をしたいと思います(猫派のかた、ごめんなさい)。前回の最後に登場した、白い犬のハリエット・メルバンこと、ハティと、その後のわが家の犬騒動で出現する黒い犬の、やはりハティについて、今月はお話します。

 ひとりの少女がくれた白い犬を、断り切れずにアパートへ連れて帰った私は、『トムは真夜中の庭で』に出てくるみなしごの少女の名をそのままつけたのですが、無意識のうちに、私は犬ハティの運命を予感していたのかもしれません。
 というのは、やはり、狭いアパートの一室で犬を飼うことは無理だということに、嫌でも気がつきましたから。

 それでも、2週間ほどは何とかごまかしながら育てましたが、そのうち、これはハティにとっても、幸せなことではないと認めざるをえませんでした。
 何しろ私は仕事にも行かねばならないのです。留守の間、鳴かずに過ごせるわけもありません。私は友人知人に電話をかけまくり、ハティの養父母を捜しました。結果は虚しいものでした。考えてみれば、犬が好きな人で飼える状況にある人はすでに飼っていますし、当然ながら、飼ってない人は犬が嫌いか、好きなのに飼えない状況なのです。だからいずれにせよ、新たに犬が飼えるという人は、極めて少ないことになります。

 結局、困り果てた私は、故郷の両親に泣きついて、連れて帰ったのです。「大学を卒業した以上、親の世話にはならない」とタンカをきっていた私は、少々屈辱的な思いで両親に頭をさげました。両親はもともと犬好きでしたから、口ではしょうがないな、といってましたが、結構楽しそうでした。近所の人に、「孫じゃなくて、犬コロあずけられて、喜んでるよ」などと、陰口をたたかれながらも。


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