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10月
10月

〜白いハティと黒いハティ(4/6)〜

<今月の本>ルース・エインズワース作 『黒ねこのおきゃくさま』



◆子どもを夫婦で育む幸運◆

 数日後の日曜日、まだ生後2か月の黒いハティをシャンプーしていたとき、夫がバスタオルを広げて洗い上げたハティを浴室に取りにきた姿を見て、私は思い出しました。
 そうやって、二人の子どもたちをお風呂に入れた日々のことを。
 私は、たまたまとはいえ、子育てを夫婦でしたという実感が、その皮膚感覚のようなものが、にわかに、よみがえったことに新鮮な驚きを覚えました。

 それは、すべての人に訪れるとは限らない幸運であるだけに、私は改めて願わずにおれません。
 (どうか、若いお父さん、お母さん、子育てを二人の思い出にできるように。その恩寵ともいえる時間を、無駄にしたり、見過ごすことのありませんように)と。

 もちろん、お風呂とは限りません。
 先日出会ったある出版社の男性は、自分も子どもに本を読んでやったと、いうのです。いつもは帰宅が遅くて子どもと時間が過ごせないので、家にいるときにはできるだけいっしょの時間を大事にしたのだそうです。彼が心がけたのは、夜本を読んでやることと、スポーツはできるだけ父親である自分が手ほどきすることだったといいます。
 (わが家では、そのどちらもが、母親の私の役目でしたけれど)。

 とにかく、やはり、量より質ではないでしょうか。そして、その質の種類は、その親それぞれで、もちろんいいのだと思います。
 たまに、そんなことがあれば(思い出がつくれる程度にあれば)、いつもは、両親の背中を見せていても、子どもは育つのではないでしょうか。

 もちろん、昨今の子どもをめぐる状況は、決して甘いものではありません。
 私も、おめでたく楽観しているわけではありませんが、しかし、つまるところ、私たちは己が良しと信じる事以外、できないのです。ささやかでも、その良しと信じることの積み重ねが、基本的には大切なのだと、改めて思うのです。


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