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12月
12月

〜子どもの願いと悲しみと(1/6)〜

<今月の本>エッツ&ラバスティダ作 『クリスマスまであと九日』



◆おじいちゃんの窓からやってくる◆

 わが家の子どもたちが、幼児から小中学生時代まで過ごした家は、大きな紅葉の樹の下の小さな借家でした。路地に面した東の窓からは古い琵琶の樹が見えました。
 ある時、田舎から出てきた私の父、つまり子どもたちのおじいちゃんに、その窓に白い木の棚と格子を付けてもらって、ちょっと出窓のような雰囲気にしてもらいました。そこに、マダガスカル・ジャスミンやアイビーを絡ませて楽しみたかったのです。ガラス窓に映るそれらの葉陰にほとんど憧れていたといってもいいでしょう。

 私の父は、短気で飽きっぽい性格でしたが、なぜか手先は器用でした。
 「男なら誰にでも、大工っけがあるもんだ」などとつぶやきながら、よく大工仕事をしてくれました。庭に置く、大きな総檜のテーブルとベンチも父が作りました。けれども、私が注文したその窓の格子は斜めにクロスさせて、正方形ではなくダイヤ型の枡目を作らなければならなかったので、これはほんとに苦労して作ったようです。ぶつぶつ文句をいいながらも、なにしろ、可愛い孫たちが、じっと待っているのですから、途中で投げ出すわけにはいかなかったのでしょう。

 この出窓は、当然というか自然にというか、「おじいちゃんの窓」と呼ばれるようになりました。そして、実はクリスマスごとに、大事な役目を果たすことになったのです。
 いったいいつごろまで、わが家の子どもたちはサンタクロースを信じていたのか、また、いつごろまで、私たちはクリスマスのプレゼントをそっと眠っている子の枕元においたのか、いずれも、まったく思い出せません。しかし、その間ずっと、この「おじいちゃんの窓」が活躍したことは確かです。


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