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1月
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〜新しい「隣人」の大切さ(5/6)〜

<今月の本>宮沢賢治作 『セロひきのゴーシュ』



 次の晩は、たぬきの子が小太鼓をセロとを合わせてほしいといってやってきます。背中に譜面までしょって『ゆかいな馬車や』をやりたいと。これにはゴーシュも結構楽しんでセロを合わせますが、子だぬきはいいます。
 「ゴーシュさんは、この2ばんめの糸をひくときはおくれるねえ。なんだかぼくがつまずくようになるよ」

 最後の晩は、野ねずみの母子がきて、子どもが死にそうなので治してくれといいます。驚きあきれるゴーシュに母ねずみがいいます。
 「はい、ここらのものは病気になると、みんな先生のおうちのゆか下にはいってなおすのでございます。」

 セロの音があんまのようにからだに響いて、血のまわりがよくなり、病気がなおるのだというわけです。ゴーシュは子ねずみをセロの中に入れて弾いてやります。
 こうして、毎晩の訪問客に合わせてセロを弾いているうちに、とうとう、楽団の演奏会の日になります。

 結末は、みなさんおわかりのことでしょう。
 動物たちと過ごすうちに、明らかにゴーシュの態度が変わっていきます。ユーモラスなやりとりの中に、最初は破れかぶれで乱暴なゴーシュが、しだいに優しくなり、人間としても成長し、動物たちのことばに耳を貸していくようになり、音楽家としても変化していく様が微妙に描かれていきます。

 最後の『インドのとらがり』を聴衆のアンコールに応えて弾き終り、拍手喝采をあびるゴーシュは、決して奇跡をおこしたのではないのです。楽長も楽団員も認めたゴーシュの成長は、単なる偶然ではないのでした。


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