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2月
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〜子どもの自立、その旅立ち(1/6)〜

<今月の本>ルース・エインズワース作 『ふゆのものがたり』



◆なぜ、出ていくの?◆

 よく耳にすることばですが、「うまくできているものだ、子どもというのは、かわいいうちは手がかかり、憎たらしくなるころには手がかからなくなる」と、いわれます。
 自分が歳をとるとともに、このことばが真実であることを実感します。わが子が成長してしまうと、街ですれ違う子どもを見てもかわいいなあと思い、そのお母さんを見ますと「いま、いちばん大変な時なのに、少しもそうは感じておられないだろう」と思います。きっとかわいくて、疲れも忘れて夢中で育てているに違いないと確信するのです。

 子が憎たらしくなるころが、親離れの時期でもあるのですが、往々にしてそこに直面した時には、そのことに気づかず、むやみに腹をたてたり、落ち込んだりするのが世の親の常のようです。もちろん、そういう時期は一度ではなく何度か訪れます。その子によって小出しにしたり、いきなりドシンと出してきたり、性格や状況により様々です。
 いずれにせよ、どうも、厳しい自然のなかで生き抜かねばならない動物たちより、ぬくぬくと暮らす人間の親のほうが、子離れが下手のように思われます。私も例外ではありませんでした。

 私もそのような大波小波をいくどか受けては、どうにか乗り越えてきたはずでした。ところが、ある日、「お母さん、私、来月から家を出るから」と、事も無げに娘がいきなり言うのです。「なぜ、出ていくの?」
 不覚にも、思わず口をついて出たことばで、自分でも驚き、うろたえました。
 「私、もう、27よ!」
 娘もすかさず返しました。
 父親としても、突然の娘の自立宣言は当然と思いつつも、内心少々さびしそうでした。

 考えてみれば、私は高校から下宿生活に入り、以来、実家に住むことはなかったし、27歳といえば、すでに娘を産んで、息子もお腹にいたころでした。かつては、「二十歳すぎても親の家にいるなんて」と生意気に思ったものです。


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