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2月
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〜子どもの自立、その旅立ち(2/6)〜

<今月の本>ルース・エインズワース作 『ふゆのものがたり』



◆アンチ・パラサイト・シングル◆

 以前のこのページでもふれましたが、私の実家が火事で全焼して、狭い家に両親を引き取りました。6畳1間に子どもの2段ベットを入れ、老いた両親と並んで寝せて、私たち夫婦は襖を隔てた居間に、テーブルを動かして布団を敷いて寝ていた時期もありました。それから10数年、やっと、少しゆったりと住める家にめぐりあった矢先、娘の完全自立がはじまったわけです。
 思えば、狭い家で家族が押し合いへし合い暮らしていた時期が、最も家族としては充実して、物は乏しくても幸福といってよい時代だったのでしょう。

 もちろん、就職して、転職し、新しい世界に踏み出した娘としては、実家を出ることが必要なことだったのはわかっているのです。むしろ、社宅まで用意して下さるというお話は有り難いことのはずです。私の、とっさの一言には、「あなたが、そんなことをいうなんて・・・」と、友人たちには、驚かれたり、呆れられたりしました。
 お恥ずかしいことながら、改めて、子離れの難しさを知らされたしだいです。

 あまり好きなことばではないのですが、最近、「パラサイト・シングル」とかいって、男も女も、就職後も親の家に同居(寄生)し、独身貴族を謳歌する若者が多いそうです。もちろん、特に東京などでは恐ろしく住居費が高いという現実もあります。また、きちんと食費くらいは家に入れて、むしろ、両親の家計を助けている人たちもいます。そして、地方から親元を離れて都市に出てきて、たくましく生きている若者たちも少なくないことを知っています。
 私には、やはり、親のほうが子離れが上手ではないように思われます。

 子どもが巣を飛び立ち、自分の世界を築き、もがきながらも成長していく。それは、生物として、人間としての通るべき自然の道筋です。また、その子どもの世界には、親には窺い知ることのできないものがあります。恐らく、侵犯してもいけないのでしょう。
 ただ、子どもがおのれの人生を歩むその過程で、傷ついたり、追い詰められたりしたときに、一時帰国と言うか、戻るべき古巣、立ち寄って癒すべき港、として、わが家があればいいと考えたりしています。


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