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3月
3月

〜春の風、青い空への思い(1/6)〜

<今月の本>F・フルビーン詩 『青い空』



◆あおいそら、しろいくも◆

 ひとより小さな体に、大きな期待とちょっぴりの不安をつめこんで、娘は小学校の門をくぐりました。20年前の春のことです。
 最初の授業参観日に出かけた時のことを、忘れることができません。
 国語の教科書の第1頁を開くと、大きな文字で「あおいそら しろいくも」と書いてありました。

 参観後の父母会で、担任のH先生が、静かにおっしゃいました。
 「どうか国語の教科書を見て、あいうえおの〔あ〕ですよ、書いてごらんなさい。〔お〕ですよ、〔い〕はこうですよ、などと教えて書かせたりなさらないで下さい。最初のお子さんがいよいよ小学校ということで、どうしても何かせずにはいられない方は、お母さんが心をこめて「あおいそら しろいくも」と、声に出して、お子さんに読んであげて下さい。その時、あなたのお子さんが、どれだけ豊かに自分の青い空を心に思い描くことができるか。実はそのことがいちばん大切なことなのです。」

 教室は一瞬しいんとしました。父母たちは、この先生のことばの深さを、それぞれに自分の心のなかでくみ取ろうとしていたのだと思います。私自身、子ども時代を過ごした故郷の青い空が、頭の上にさあーっと広がりました。こんなすごいことを語る先生に自分も出会っていないし、ましてわが子が出会うとは想像もしていませんでした。
 その日から、娘は同じ先生とクラスメートで2年間をすごすことになります。学校生活のスタートとして、この上ない幸運だったと思います。


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