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3月
3月

〜春の風、青い空への思い(5/6)〜

<今月の本>F・フルビーン詩 『青い空』



 『青い空』が、この詩のイメージをもとに編まれたことは明らかです。この美しくかぐわしい詩が書かれた背景と状況を思うとき、ヨゼフがどんな思いで自らの<青い空>を夢見ていたかが、痛いほど分かります。

「あの 大空の青」というとき、それは収容所の汚れた小さな窓から見上げたのではないでしょうか。或いは、死の恐怖におののきつつ、それに負けまいとして、勇気を振り絞るために、過酷な強制労働の汗と涙の目で見つめたのかもしれません。
 それとも、わずかに許された睡眠の薄れゆく意識のなかに、突如、ふるさとの青い空の記憶がよみがえったのでしょうか。
 いずれにせよ、彼の<青い空>は自由と希望と愛、そして恐らくは平和の象徴としての「青」だったろうと思われます。

◆子どもたちの声が聞こえる<青い空>◆

 改めて、この本『青い空』をめくってみます。
 これらの色彩もあざやかな絵は、そのサインからみて、だいたい1928年から1935年にかけて描かれたようです。まずはその色の美しさ。緑と太陽の光にあふれ、そして空の青。その下で、子どもたちはいかにものどかに、素朴に遊び興じています。そのざわめきや歓声が絵のなかから微かに聞こえてくるようです。

 子どもたちは、ビー玉をしたり、タコ上げやボールあそびに夢中になったり、森で丸太の上を渡ったり、「りんごごっこ」でりんごのつもりになったり。夏には水浴び、冬には氷の上で鬼ごっこをしたりして、子どもの時間を過ごします。
 そして「ひぐれどき」になれば、おかあさんが、「ごはんですよ」って呼びにきます。

 そのような光景は、ついこの間まで、日本のどこでも、見受けられたものでした。
 そうした元気な子どもたちの姿を、フルビーンは愛をこめて「ちいさい天使のようにかろやかに」と歌います。チャペックの願いを受けて、心新たに祈るかのように。


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