過去10年間にわたり、テレビ、ビデオ、コンピュータ・ゲーム、テレビ・ゲームといった映像メディア(Visual electronic media, 以下VEM)が子供の行動に影響を与えるということが数々の研究で実証されている。最も顕著にあらわれた研究結果は、メディアにさらされている時間と暴力性は関連があるということである(Bushman and Anderson 2001)。映像メディアはまた、肥満や大量消費にも関連があるとされている(Villani 2001)。最も確証性の高い研究のなかには、小・中学生の男の子達を対象に行った事例/対照研究があり、これらの研究によると、あらゆる状況においてVEMにさらされている時間が少なければ少ないほど子供達の攻撃性は弱まることが予見できると証明されている(Robinsonその他 2001)。
最近では、2、3才の子供達の6人に1人は自分の部屋にテレビを持っている。就学前の子供がテレビの前で過ごす時間は1日に平均4時間以上である(Jordan and Woodard 2001)。その上、平均的なアメリカの子供は1週間に40時間も映像メディアにさらされているのだ(Bushman and Anderson 2001)! この驚愕すべき行動の変化は50年ほど前から起こり始めた。また、精神病の障害に陥りやすい予備軍の特徴についての研究も行われた。前出の研究をはじめ、多くの研究は、VEMに過剰にさらされると、行動が堕落していくという因果関係を立証している。神経系の発達メカニズムの根底にあるのは何か?それをもっと深く探るために、私が実際に担当した事例を用いて説明する。これは、過剰にメディアにさらされたことが原因で精神障害になった、あるいは精神障害が悪化した数ある事例のうちの一つである。
幼少期の子供にはこれらの感覚器からの情報を表象的思考と行動による反応を使って展開させ、統合するための複合的な機会が必要である。ダニエル・シーゲル (Daniel Siegel) の著書 “The Developing Mind (1999年)” によると、こうした活動は主に脳の眼窩前頭皮質という部分で行われる。
VEMにさらされると必ず行動上の症状を引き起こすのだろうか?それは明らかに違う。症状を和らげるために理論的、経験的に実証されている要素とは、節度をもってVEMを利用すること、家族での活動、親の同調と状況反応、そして、達成感を味わえるような様々な活動の範囲を広げることなどが挙げられている。(幼い子供向けの活動内容については、米国小児科学会から発行されている “The American Academy of Pediatrics’ Media Matters, Work Packet for Clinicians” の中に紹介されている。(電話番号:847-228-5005、ホームページアドレス:www.aap.org)また、VEMにさらされたことによって起こった行動変化と精神的な進行は元に戻すことができるという良い報告もある(Robinson)。精神科医として、家族に施す治療として最も経済的で、他からの介入が最も少なく、最もリスクの少ない方法は、テレビを消して子供と一緒に遊ぶことである。VEMは家の中において、あまりにもあたりまえの存在になっているので、メディアへの頼り過ぎと子供の行動の問題を減らすためには、親を教育するだけで解決できることがほとんどである。
このようにメディアに頼るのは、もともとに問題があるということを表しているのか、それとも二次的なものなのか?私はその両方だと思う。VEMに接している時間が増え、社会との関わりを避けることは、鬱病、様々な不安障害、特定の精神障害など、現代における様々な精神病の一つの特徴である。しかし、VEMは単に精神的に弱い人に対してもある種の中毒的な影響を及ぼし、社会的活動において堕落させる。
The Brown University Child and Adolescent Behavior Letter, July 2003
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