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Vol. 21, No. 3, March 2005
1. 移民家族の子ども達:私達は彼らを差別していないだろうか?
移民家族の子ども達:私達は彼らを差別していないだろうか?
グレゴリー・K. フリッツ 医学博士、編集長
アメリカは移民によって作られた国であるが、その移民の子ども達への待遇は常に揺れ動いている。ごく一部の人々を除いた全てのアメリカ人の先祖は移民であるにも関わらず、現行の政策は、移民の子どもに対して差別的であり、私が思うに、近視眼的で長期的展望に欠けている。それが欠陥政策だということを最も明白に証明しているのは1996年に施行された連邦福祉改革法の条項である。この法律によると、たとえ合法移民であっても、移民の子どもには福祉、食料割引券、医療保障などの受給資格が無い。デイビッド&ルシール・パッカード財団発行の『The Future Children』最新号には、この問題を全面的に扱った大変興味深い内容が掲載されている。
2000年に行われた人口調査によると、アメリカ国民の11%が外国生まれであり、アメリカに住む子どもの20%は、少なくともどちらかの親が移民だという。ベビーブーマー世代が健在なうちに、現在マイノリティーと呼ばれているクループに属する人々がアメリカ人の多数を占めるようになると言われている。移民とその子ども達が、我々の将来において中心的存在となり、彼らの成功が様々な面において今後数十年間のアメリカの性格や繁栄を決定づけていくことは明らかだろう。
移民の子どもは、アメリカで生まれ育った親を持つ子どもに比べて、あらゆる面で不利な立場に置かれている。貧困の割合が過度に高い。アメリカ生まれの両親を持つ子どもの貧困率が14%なのに対し、移民の子ども達の貧困率はその1.5倍(21%)である。貧困率が高いのは、明らかに移民の親の仕事が低賃金だからであり、移民が無能であるとか労働意欲が無いからではないし、片親だからとか家族が崩壊しているとか金銭的にだらしないからでも無い。
また、移民の子どもは、医療保険に加入していないことが多いため、病気の予防や必要に応じた健康管理を受けにくい。加えて、言葉の壁もある。72%の子どもが家では英語以外の言語を話している。子どもは親よりもずっと速く英語を身につけ、文化にも適応できるので、社会に同化しやすいが、親との間に文化的な摩擦が生じる可能性も否めない。さらに、平均的な移民の親はアメリカで生まれ育った親に比べると、極めて低学歴である。例えば、アメリカで生まれ育った父親の88%は少なくとも高校を卒業しているが、移民の父親の高校卒業率は60%である。限られた教育しか受けていない親は、子どもの宿題を見たり、教師と話をしたり、学習面での模範となったりすることが難しい。
しかし、公正を期して言えば、移民の子どもの方がアメリカで生まれ育った親を持つ子どもよりも恵まれていることもある。移民の子どもは比較的健康に恵まれ(医療保険を受けていないわりには)全体的に見ても子どもの頃の健康状態には問題が少ない。そして、両親のそろった家庭で育てられている場合が多い。(片親に育てられた子どもの割合は、アメリカで生まれ育った親を持つ子どもの26%に対し、移民の子どもは16%にすぎない。)また、移民の子どもの40%が両親に加え、他の親戚とも一緒に暮らしていることからもわかるように、その多くは大家族の一員として暮らしている。(これに対し、アメリカ生まれの親を持つ子どもが大家族の中で暮らしている割合は26%である。)さらに、移民の多くは同一民族で結束の強いコミュニティーを形成して暮らしており、強い勤労意欲と志を持っている。そもそもそれが彼らをアメリカ移住へと駆り立てた原動力であった。
公共の支援プログラムは、貧窮者の自主性を導き出し経済的自立ひいては成功に結びつけられるようにデザインされている。しかし、その多くが役に立っておらず、むしろ逆効果なので廃止せよと冷笑する人がいる。彼らの意見はある程度は事実だとしても、そうしたプログラムは全てのアメリカ人に対して廃止すべきであって、殊更に移民の子ども達を槍玉にあげるべきではない。実際、就学前の子どもの教育の質を高めると、就学後の学習に長期に渡ってプラスの効果が期待できるという信頼できる研究結果がある。アメリカでは、二カ国語(バイリンガル)で教える授業に反対する意見が多いが、バイリンガルで教えることによって、より早く英語が習得できるということも立証されている。しかし、経済のグローバル化が進む今の時代になっても、バイリンガル教育が英語を母国語とする者にもたらす利点についてもまた、めったに取り挙げられることはない。
移民であった祖先から何世代も離れた、英語を母国語とする生粋のアメリカ人として私が強く確信するのは、移民家族の子どもの経済的、教育的成功を保証するために出来るだけのことをすることは、移民以外のアメリカ人の利益のためであるということだ。この二つが成功すれば、極めて質の高い労働力の確保につながり、国の経済の発展をも約束できる(故に、社会保障弱者を減らすこともできる)。さもなければ、賃金や生活上の大きな格差に憤りを感じ不満を募らせる下級階層の人々によって、異文化間の対立や敵対感情が高まることになる。しかし、移民の家族や子どもが公平な保障や機会を受けることができれば、その結果としての成功が彼らにアメリカ人としての市民精神をもたらし、この多元社会の生産的な一員となるだろう。
そしてそれがまた、我々が人としてとるべき正しい行動なのである。
The Brown University Child and Adolescent Behavior Letter, March 2005
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