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Vol. 22, No. 8, August 2006
子どもの慢性健康障害と向き合う

子どもの慢性健康障害と向き合う

幼年期・児童期を通じてどの子どもも健康面で様々な問題を抱えるものだが、たいていの場合は軽度であり、病気にかかってもそのうち治ってしまうもので、子ども達の日常生活や成長に影響が及ぶことはない。しかし、なかには慢性的な健康障害により児童期を通じて生活に支障をきたしている子どももいる。
慢性疾患を抱える子どもは調子が良い時も悪い時もあるが、常にその病気を抱えながら生活している。糖尿病、喘息、鎌状赤血球貧血、癌など、慢性症状をもたらす病気は非常に多いが、慢性病と向き合わなくてはならない子どもとその家族には多くの共通点がある。慢性病を抱えて生きていくことを学ぶのは、本人や親、兄弟、友人にとってとても大変なことである。

慢性疾患はどのような影響を子どもに及ぼすか?

慢性疾患を持つ子どもは、そうでない子どもよりも頻繁に病院に行き、医師の診察を受けることになる。治療方法には恐怖や痛みを伴うものもある。又、入院は時に、怖く、孤独なものである。
慢性病がある子どもは、そうでない子どもとの違いを感じることになる。生活に制限のある場合が多く、家族は子どもの世話をするために、自分たちの生活を変えていく必要がある。

子どもはどうやって慢性疾患を受け入れ、対応していくのか?

慢性疾患の診断に対する子どもの反応の仕方にはいくつかの要素が関ってくる。子どもの性格、罹った病気、家族などであるが、子どもの成長段階も大きな要素である。大きくなるにつれ、病気への子どもの理解度や対応策は変化してくるものだ。

子どもの成長段階別の対応
幼児や小児は、次第に落ち着きを取り戻し、安心感を覚え始める。最初、多くの子どもは、自身の病気のことをあまり理解していないが、痛みや身体の不自由、親と離れるなどの試練を乗り越え、自信や安心感を強めていく。親は、痛みを伴う治療に付き添い、入院の間は病室で共に過ごし、抱きしめたり、なだめたりしてなるべく頻繁に子どもと接することで、子どもの力になれる。

就学前の子どもは、自立心を形成しはじめる時期にある。病気になることの意味は理解しているかもしれないが、こういう治療をすればこういう結果が期待できるなどの病気の本質的な事柄までは理解できていない。入院や計画に沿って治療を受けることで育ちつつある子どもの自立心が試される。親が決めた制限に反抗することで、自分の世界をコントロールできない状況に逆襲を試みることもあるかもしれない。親は子どもが自分で選択できる余地のない事柄に対しては厳しく対応する一方、治療において融通が利かせられる部分については、子どもに選択肢を与えることで、子どもを力づけられる。

小学校低学年の子どもは、自分を取り巻く環境を自分でコントロールしているという感覚を持ち始める。自分の病気の理由を説明できるが、説明する理由すべてのつじつまが合うわけではない。この年頃の子どもは不思議な考え方をする。悪いことを思いついたり、兄弟を叩いたり、野菜を食べなかったから病気にかかったと信じこんでいることもある。自分と友人が違うことも感じ始める。親の細心の注意を払っての監督下であるが、病気の管理に子ども自身を加えさせてあげることによって、親は子どもの力になれる。自分のせいで病気になったのではないと、子どもによくわからせることも大切である。

小学校高学年の子どもは、自分の病気とその治療を理解できるが、大人のような対応を子ども達に期待してはいけない。学校に行けない、あるいは友人と一緒に行動できないと仲間はずれになったように感じる。親たちは、他の子ども達と一緒に行動することを制限して、子どもを守らなくてはと思うであろうし、それは自然の反応であるが、子どもが形成した自立心や状況に対するコントロール感を損なう可能性もある。医師が容認した範囲内で、親は子どもが学校や他の活動に参加できるよう手助けするべきである。

青年期の子どもは、家族とは離れた自己を確立し始める。十代の子どもたちにとって自己のイメージは極めて重要なのである。したがって、病気や薬などによって彼らの外見が損なわれてしまったら自己イメージを損なうものとなり問題である。十代の子供達は家族から真の自立をし始める。長年にわたり子どもの世話に心血注いできた親にとって、保護者としての役目を終えようとすることは、とてもつらいことであろう。

子どもの慢性疾患ともっと上手に関わっていくために、また慢性疾患を持つ子どもが病気と上手く付き合っていけるようにするために家族は何をしたらいいのだろうか?

子どもと一緒に取り組む、病気の情報を子どもに伝える:
その病気がどんなものなのか、病院ではどのような治療をうけるのか、などについて、年齢に応じた方法で子どもに話す。それをしなければ、子どもは最悪の事態を想像してしまうかもしれない。

治療への心構え:
予想外のストレスは、予想できるストレスよりも対処が難しい。治療によっては肉体的・精神的なストレスを伴う場合がある。何日か前から心の準備をする方がうまく対処できる子どももいれば、心の準備をすることで心配のあまり具合が悪くなってしまう子どももいる。子どもとよくコミュニケーションをとり、臨機応変になることが不可欠である。

子どもに選択肢を与える:
慢性疾患を持った子どもには、どうしても従わなければならないことがあるが、それほどでもなく、融通のきく事柄もある。必ずしなければならないこと(薬の服用や特別食など)と、選択の余地のある事柄(頓服薬の服用、特別食の範囲内での食べ物の選択など)を知る。子どもが自己主張をしようとすると、意見の衝突が起きるかもしれない。就学前の子ども、あるいは学齢の子どもでも、親の寛容度を試そうとして親の言うことに反発することがよくある。慢性疾患を持つ子どもには、生活の中で許される範囲内で何でも自分で決められるように、他の子ども達よりもなるべく多くの選択肢を与える必要がある。

友情や仲間同士の活動を支援する:
病気は、毎日の日課や活動を妨げがちである。子どもや十代の若者にとって、とりわけ悲惨なのは、友情が薄れたり壊れたりすることである。病状の変化に伴って、友達と少しずつ疎遠になっていくことがある。子どもが友達の輪の中に入っていられるように、またその友達関係を維持できるように親が気を配ることは、子どもが自分の病気と上手に関わっていくのに非常に役立つ。この時期、子どもが新しい人間関係を築き、それを維持する方法を見つけるための支援をすることが大変重要である。

希望を持つ:
慢性疾患と向き合うのは、憂鬱であり恐怖でもある。非常に重要なのは、希望を持ち続けるということである。不安や否定的な感情に気付かないふりをするのではなく、きちんと対処すべきである。しかし、あれこれ思い悩むのは良くない。物事の良い面を見つけ、前向きな結果が得られる可能性に目を向けることが、子どもにとって貴重な教育となり、親自身も子どもの病気とも上手く付き合っていくことに繋がる。

聴く:
子どもが困った時、いつでも相談に乗ってあげられるようにする。子どもの体調を聞き、その返答を聞く。どんなことが辛いのかを尋ね、それを解消する方法を一緒に探す。鬱の兆候に気づけるようにする。もし子どもが自殺について話したら、真剣に受け止める。子どもに不安な気持ちを吐き出させ、そのような気持ちを持つのはいけないことではないと教える。怖くて混乱しているのに、それを表現できないことほど辛いことはない。

臨機応変になる:
子どもが自分の病気に順応できるようになるために、親として、子どもの限界を知り、できる限り普段通りの生活が続けられるように支援する。

家族が一緒に楽しめることを見つける:
家族全員にも、ストレスが溜まることが予想される。ストレスが溜まっている時は、家族に気を配ったり、家族同士支え合ったりするのが難しいかもしれない。しかし、そういう時こそ、家族同士の支え合いが大切なのだ。病気のことを考えない時間を家族で過ごす。両親が二人きりで過ごす、父と子、母と子で出かける、家族全員で遊ぶ、など、家族が一緒に過ごす時間を作れるように、自分の時間を家族のために充てる必要があるかもしれない。

対処する力をつけさせる:
親は、子どもが病気という特別な難題に対処するために自分なりのやり方をみつけられるよう助けてあげる必要がある。十代の若者に対しては、その病気が自分にどんな影響を与えているのかについて話し合い、問題を解決したり感情を整理したりする方法を見つけさせることがとても大切である。そうすることで、自分に自信を持つことができ、試練に立ち向かう力を培うことができる。

子どもに必要以上のことは聞かせない:
内緒にしておきたい話をする時は、子どもがいないところでする。子どもは思っている以上に話を聞いているものである。子どもが目をつぶっているからといって眠っていると思い込まないこと。

子どもの学校と協力し合う:
健康への特別な配慮を必要とする子どもを学校に通わせる時、家族と学校との十分なコミュニケーションがとても大切である。

家族全員と周囲の人達で支援ネットをつくる:
自分の望むやり方、可能なやり方で、家族一人一人が手伝うようにする。遠い親戚、学校、宗教団体、近隣の人達、子どものかかりつけの病院など、身近な家族以外にも助けを求める。一時療養サービスなども利用する。誰でも、殊に特別なケアを必要とする子を持つ親は、時には休息が必要になることがある。一時療養センターは、こうした子どもを対象とした短期間の育児施設である。ここでのサービスは保護者が疲れ切ってしまわないよう支援するものである。

この記事は、“University of Michigan Health System website(ミシガン大学保健制度ウェブサイト)”に掲載されている“Children with Chronic Conditions(慢性疾患を持つ子ども)”をミシガン大学教職員が抜粋したものである。www.med.umich.edu


The Brown University Child and Adolescent Behavior Letter, August 2006
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